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かんべえの不規則発言の8月15日に気になる発言があった。
○「戦争の記憶を風化させてはいけない」というのは、反対しにくい正論である。しかしそれってやっぱり無理があるのだ。時間がたてば、人は必ず忘れる。実体験した人もどんどん減っていく。できもしないことを、できる振りをするというのは精神衛生上、よろしくない。特に子供たちに向かって、そういうことを強いてはいけない。
言いたいことは分かるところはあり、一方的な平和主義は全く非現実的であるにもかかわらず、その主張を維持するために戦争経験を持ち出すレトリックは私も大嫌いだ。
ただ、それでも、これはいろいろ無理な議論だと思うし、今の若い世代のことをよく分かってないのではないかと思った。
そもそもを言えば今の日本が成立しているのはあの戦争で負けたことにあって、大戦を経験したものがいなくなっていくとしても、記憶としては永く保持しなければいけない義務が私たちにはある。
忘れないようにする努力を欧州ではしつこくやっていることを吉崎が知らないはずがなく、そういうことはやっても無駄だと吉崎は欧州人相手にも言えるのだろうか。これが一つ。
また、保持されねばならない記憶がいかなるものか、という問題がある。大戦を実地に経験した世代がほとんど死んでしまっている中、歴史をよく知るということがなくなってしまった。
その代わりに残ったのが、歴史をネタにしたプロパガンダで、これは今に始まった話ではなく、かつ左翼も右翼も関係ないわけだけれども、一般的には流通しているのがたいていこの種のものであるために、理解が全く偏ってしまっているという問題はある。
今の若い世代なぞ、このご時世なら右方向からのプロパガンダに完全に染まっている子が多数になっていても全くおかしくない。いわば、変な歴史を「子供たちに強いている」わけで、こんなことがあっていいわけがない。
むろん、問題は子供ではない。大人が愚かを極めていることにこそ、問題がある。