http://tameike.net/comments.htm

<8月17日>(金)

谷口智彦さんからご恵送いただいた『安倍晋三の真実』(悟空出版)を読了する。

(略)

○ちなみに不肖かんべえは、安倍政治と安倍外交を評価するものでありますが、個人としての安倍晋三氏にそんなに惚れ込んでいるわけではありません。何度かお近くでお話ししたことはありますけどねえ。たぶんそこの受け止め方は、谷口さんとはちょっと違う。でも、間違いなく共有している部分がある。それは「安倍嫌い世代に対する反感」である。あの人たちはしょうがないよねえ。と、昔、岡崎久彦さんとお話ししたことを思い出しました。

私は基本的に中道右派で、安全保障上の問題や特定秘密保護法などはよかったんじゃないのかと思う。そこは安倍内閣の評価という意味では是々非々だ。

ただ、根本的にもう勘弁してくれとなったのはいくつかある。一つは森友・加計の問題で、あれはさすがに限度を超えているようにしか思われない。

この点、
http://d.hatena.ne.jp/finalvent/20090204/1233707381

政治って、私は本質的には、夜警とゴミ処理、くらいだと思う。

と主張していた人たちは(同種の主張・立場をとっていた人はfinalventさんに限らず、相当いると思うが)、どういうふうに考えを整理しているのかと大変に疑問だ。「夜警とゴミ処理でいい」という立場と、森友・加計の話は全く相いれないからだ。

あえていえば、森友の話はまだゴミ処理に近いうえ、何度も書くが私の身近にもある話にすぎない。それでも、わざわざ一国の総理夫人が絡む話では到底ありえず、総理夫人の自覚のなさについての批判は免れえないうえ、まして無茶な理屈で擁護し、無駄に組織的に隠蔽までするのは理解を超える。

二つ目はずっと追っていたリフレ派の問題で、あの経緯を見ていると、あまりにも無責任、としか言いようがなくなる。無論、私は経済学について全く知らないわけで、評価について断定はできないのだが、それでも専門家筋の間では大方の評価は固まってきているように見えるが、どうなのだろうか。

この点についても、安倍さんはよくやったとは言い難いと思っている。

・・・

もう一つは、安倍さんを支持している右翼と私を一緒にしてもらっては大変に困る、という点だ。

吉崎達彦は「安倍嫌い世代に対する反感」と言っている。これは私もよく分かり、だから、吉崎が特に指し示したがっていると思われる、団塊世代、あるいは団塊世代の左翼が私もとりわけ大嫌いだ。

ただ、それに対する反発心があるからといって、頭の悪い右翼と一緒になるのは、私には到底許容できない。意味不明の屁理屈をこねくり回して、安倍さんを擁護したいとまではとても思わない。

かつ、私が割と懸念するのは、この種の「反感」は私にはよく理解できるし共感もするのだけれども、「反感」を根底に置くのは何も生まないし、かえって危険ですらある、という点だ。

1922年、ムッソリーニが政権をとれた大きな理由の一つは、左翼の躍進に対する危機感が広く共有されたから、という歴史を、私なぞはどうしても思い出す。たとえ積極的にファシズムを支持しなくても、「政権に取り込んでしまえば、おとなしくなるだろう」と許容してしまったが最後、見込み通りにならずに、あとは周知の歴史的経過をたどった。

もちろん、100年前と現在と全く違うので、直ちにファシズム現代日本をつなげることは短絡にすぎるのだけれども、しかしそのような歴史的教訓は心にとどめておくべきではないかと考えている。