私は、安倍内閣はもういいよ、もうやめてくれと思っているが、今般の朝鮮半島の情勢から、安倍内閣の外交を「蚊帳の外」論の類で批判するのは間違っている、あるいは根拠が薄いのではないかと思っている。外交は、それほど単純、かつ極めて近視眼的な視点から評価を下すものではない。それに、朝鮮半島の政治が全く分からない、ハングルも知らない自分にはそんな判断なんぞできない。

「蚊帳の外」論による批判から距離を置いているのは専門家にもいて、木村幹もその一人のようだ。となると、軽々な批判には私は乗れない。

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ただ、別の観点からいかがなものかと以前から思っていることなら書ける。

安倍内閣を支持している保守派は、以前から朝鮮半島や半島の人々をサンドバッグにする、きわめて差別的な言説を繰り返すことで、政治的なアイデンティティを確保してきた。

拉致問題でさえ、現実にはこれを国内政治のために利用することがまず第一に置かれているような状態だ。

たとえば、先日の日米首脳会談等々の報じられ方を見ても、トランプが拉致問題について北朝鮮にものを言ってくれるように安倍総理が話したという種類の報道を多数みたけれども、どう考えても、核問題・ミサイル問題のほうが拉致問題よりもはるかに重要だ。拉致問題が重要ではないとは思わないが、優先順位が狂っているとしか思われない。

これについては、やむを得ない事情もあるのかもしれないが、拉致被害者家族の側も政治的に利用される状態をそのままにしているように見受けられることも、私はずいぶん以前よりおかしいと考えている。

同様の問題は、ミサイル実験のたびに警報が鳴る・地下鉄が止まるといった、無駄な警戒態勢も、到底国内向けの政治的アピールの域を出るものではなく、疑問と言わざるを得なかった。

さらにその上、韓国人・朝鮮人に対する差別を世論に喚起しつつ外交を行うのは極めて危険だ。外交における世論の要素は極めて重要だからだ。

ごくごく身近で単純な話になるが、昨日、Youtubeで南北首脳会談の動画を見たくて、南北両首脳の名前を漢字で打ち込んで検索してみたら、出るわ出るわ、偏見・差別、まさに「サルでもわかる」ように加工された動画ばかり。まともなニュース映像は10に1つあるかどうか。

これがごく一般の韓国・北朝鮮に対する認識だとしたら、そちらのほうがよほど問題で危険だ。

私は北朝鮮に融和的姿勢をとれと言いたいのではない。むしろ調印された板門店宣言を見ても、どうなんだか、と思っているくらいだ。

そうではなくて、隣国に対する差別が根強い世論を背景に、まともな外交なぞ展開できるわけがないではないか、と言いたいだけだ。

こういうことを書くと、必ず、「韓国人だって」と言われるに決まっているが、であればなおさらのこと、一般の世論に差別感情を喚起するべきではないだろう。

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まとめると、私が言いたいことは二つ。

一つは、朝鮮半島問題を国内政治のために利用するのもいい加減にしてほしい。そういうことをすると、自分で自分の首を絞めるだけだから。

もう一つは、安倍内閣を支持する保守派による、朝鮮差別・韓国差別をバックに、外交なんぞできるか、ということ。

そんなに間違ったことを言っているとは私は思わないのだけれども。