これ、そんな極端な意見かなぁ

ホメオパシーネタは、自分なりの意見とまではいかないが、まあこんなところじゃないの?というのはあって、それはもう書いた。改めてまとめてみる。


まず、ニセ科学批判の人たちは、ホメオパシーなんぞは全部否定、こんなものが存在する日本なんて無知蒙昧の世界にする気かと、こういう勢い。これは確かにそうで、ホメオパシーは科学的に証明されてないし、日本ではまだなじみがないから。


で、理屈はそうだけど、これを現実に当てはめてみるとことはそうそう簡単ではないんじゃないのかなと僕は思うわけだ。

一つ目

日本はホメオパシーが広まってないからあれだけど、他国は結構浸透している。Wikipediaで面倒だからEUの規制の部分しか読んでないけど、要するにレメディは十分に希釈してやりゃ無害だからいいだろう、ということなんだと僕は解釈した。逆に言うと、規制があるということは存在そのものは許容しているわけだ。


ちなみに、ドイツのホメオパシーの薬の売上はおおよそ500億円くらいらしい(全体では3.5兆円くらいだと思う)。それなりの市場があるんだね。


で、今年の8月の記事で、最近、ホメオパシーを利用するドイツ人が増えたという記事がWikipediaにリンクされてましたと。
"Unerwartet positives Ergebnis": Vertrauen in Homöopathie wächst - n-tv.de

"Der häufigste Weg zu Homöopathika führt über persönliche Empfehlungen von Bekannten, Ärzten oder Apothekern", sagte de Sombre.

ホメオパシーを勧めるのは、知人、医師、薬剤師だそうな。(ちなみに、このアンケートの依頼主は製薬メーカーの団体)


イタリアの薬局でも、ごくごく普通に“Omeopatici”や“Omeopatia”という看板が併設されている。他の国のことは知らない。


つまり、ホメオパシーそのものは、こんな風に根付いてしまっている。日本人が一般に知的レベルが高いことは僕は否定しないが、じゃ、ドイツ人もイタリア人もみんな馬鹿かというと、そういうわけではないだろう。
http://www.cml-office.org/ww-gl/article.php/20080612140807273/print

 ところで,私はまったく合理的根拠がないホメオパシーが欧米で広く受容されていることが不思議だったが,著者の次の説明にはなるほどと思わされた。

 そもそも,たいした病気でない患者にとっては,必要もないのに抗生物質を処方してもらったり,風邪薬を過剰服用したりするよりは,ホメオパシー療法の方が健康によいのだろう。

 ただ,もしこの主張に理があるなら,欧米以上に薬漬けの日本では,今後ホメオパシーが広まる素地が十分にあることになってしまうのが困る。

ま、それなりの合理性がある。


したがって、WHOがHIV感染症についてホメオパシーが効かないと部分否定しかできなかったのは、こういう現実を踏まえてのことなんでしょうな。いきなり全部否定すると、ホメオパシーの人たちがひっくり返っちゃう。


ちなみに、ドイツのホメオパスの団体の反応がすごく面白かった。BBCの報道を受けて抗議したんだけど、その中身が「ホメオパシーは効かないという見出しはけしからん」の一点張りでHIVには効かないなどの点については触れてない。ところが、団体のサイトにはHIVはともかく、感染症などには聞くという報告があるぞと強気である。ようは分かってて大歌舞伎をやってるんじゃないかとみた方がよさそうだ。こういうことは大体もう書いた。


で、日本だけども、これだけ国際化してるのに日本だけ無縁というわけにはいかない。ホメオパスの人のブログとかを見ると、イギリスの団体の試験を受けたら英語が厄介だったのに通っちゃったとか、会費の二重払いなど事務がお粗末であるとか、碌な団体じゃなくて、結局のところ日本はホメオパシー業界にとって未開拓の市場だから狙ってるんでしょうね。


で、これに本気で対抗するには、ネットで吠えてもダメだと思うというのが僕の意見なわけ。ニセ科学批判には医者もいれば学者もいるんだから、医師会なり学会なりがきちんと公式の声明を出す、ホメオパシーを扱う医者は医師免許をはく奪するよう要求するなどやることはあって、それが本筋じゃないですかと。


それか、共存の道を探るのが現実的でしょう。保険が適用されないなど対応を見直してる国もあるとは言いながら、よそはそうしてんだから。必要のない薬や湿布を出さなくて悪口言われるより、ホメオパシーで誤魔化してる方が合理的かもしれないよ。


ちなみに、予防接種の話がホメオパシー関連で必ず出てくるけど、これも結局は予防接種のあり方の問題や啓蒙の問題であって、もしも予防接種の問題さえ解決したら、ホメオパシーの存在は認められるのですねということになってしまう。予防接種は危ないと煽るからホメオパシーはだめだと、一直線には行かないだろうと思う。その他の病気でも多分同じ。ホメオパシーで癌は治りませんと医師会なりがアナウンスすればいいだけの話じゃないの。

二つ目

ホメオパシーネタでよく言われることの一つが途上国の医療の話で、たとえば子供がかわいそうじゃないかというのである。


これはただの偽善、というか非常に罪深い発想で、先進国に住む人間の驕りなのかもしれないなと思う。


最初は、僕もホメオパシーの人のこういう発言を読むと呆れるわけ。

But she added: "Millions die each year as those affected have no access to these drugs.


"It therefore seems reasonable to consider what beneficial role homeopathy could play. What is needed is further research and investment into homeopathy."

BBC NEWS | Health | Homeopathy not a cure, says WHO
途上国の医療の乏しさや医療援助の実態なぞ、僕には全く想像がつかないけれども、ホメオパシーが仮に除去されたとして、じゃ十分な医療が受けられるのかというと、無理でしょう、たぶん。すぐに第二の「ホメオパシー」がでてくるだけじゃないかな。いや、まともな医療を受けられるのにそっちに走るというケースも、あるのでしょうけどね。


結局、こういう環境の人たちがかわいそうだという話を持ち出すなら、まともな医療を充実させようとするのが本当のはずなんですよね。それがホメオパシーの人のこういう意見に対する対抗にもなるのです。


具体的に言うと、あなたの財布から月いくらか余計に出してくれ、お医者さんは現地に行って治療してくれ、という話。


じゃ、ニセ科学の人はしてくれるんですか?っていうと、、、なにもできませんわな。無力なんです。批判じゃない。これが現実だろうと。


僕は思うけども、死病でも、軽い病気でも、ウソでも医者に見せてやりたいのが人情というもので、安価でできるんならそっちに頼るのが当然だ。結果的に死ぬかもしれないけど、残酷だけどそれはそういうものかもしれない。そういう状況を変えるには、もっと具体的な力が必要のはずなんだ。


むしろ、ニセ科学批判の人たちの議論でむごいと思うのは、こういう事例を盾にして「だからホメオパシーはけしからん」とやることで、、、つまり、現実になんかしてくれって言うと逃げるくせに、建前だけ気の毒な人たちを利用する。それでネットでホメオパシーはけしからんと叫ぶことでなにかしたつもりになってる。だけど、現実はなんにも変わらない。つまり、自己正当化に利用してるだけ。


むごいでしょう。残酷でしょう。罪深いでしょう。そしてこんなの偽善でしょう。



こういう考え方、極端なものだとはちっとも思えないんだよねえ。


改めて書いてみても、やっぱりニセ科学批判ってどっか変なんだ。ホメオパシーネタを例に取ってるけど、反社会だのカルトだのとまで言うならば、そこまで危険なものならヨーロッパでとっくの昔に禁止されてなきゃおかしいんだよなあ。でも、ネットではそうやって煽った方が受けるし。で、こうやってどんどんどんどん、批判の根拠が激しくなっていっちゃう。


重ね重ね追記すると、ホメオパシーが科学的根拠のないものだと指摘すること、それ自体がけしからんと言いたいのではないので念のため。