被差別部落の知人が私にはいるが(私の住んでいるような地域で、部落と無関係に生活することは不可能だ)、荒っぽい人ばかりというわけでは決してない。大変に穏やかな人も少なくない。

 

ある老人なぞは「場所によっては『これができん言うんやったら、できるまで足に鎖をつけて一歩も外に出さんど』くらいは言うところもあるで」と言ってカラカラと笑っていたが、昔を知る人だけに言葉に迫力がある。

 

それでも若い世代の人たちは、そういうやり方では社会に適応できないということをよく知っている。だから絶対にそういう態度は表に出さない。まったく穏やかな社会人として日常生活を送っている。


私はこれがいいことだ、時代の流れであって、あるいは社会の進歩だろうと思っている。

 

「足に鎖つけたるど」という言葉が出るには、それなりの歴史的背景がある。また、限られたコミュニティの中だけで通用するならば、そういうやり方でもいいかもしれない。

 

ただ、そのコミュニティの人たち自身も変わろうとしている。

 

ましてや、コミュニティ外の人間が、そういったやり方を是としてみたり、真似してみたりすることがあっては決してならない。