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- 作者: 中北浩爾
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/04/19
- メディア: 新書
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しかし興味深いのは、得票数を総有権者数で割った絶対得票率が、自民党の場合、決して高くないという事実で、だからこそ組織票の重みが増し、公明党と連立を組む意味が出てくる。
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絶対得票率が低いのに、自民党が選挙で連戦連勝する理由は、低投票率、自公連立、そして野党の分裂が挙げられる。
逆に言えば、自公連立に勝つには、反自民・反自公で結束し、かつ無党派層を動員して、それでようやく政権交代ができることになる。同書でもその点は何度も指摘されているが、これが野党にとってハードルが高すぎるのではないか、という私の印象が確認できたような気になっている。
ハードルが高すぎるので、雑多でもなんでも「反自民」で結束するしかなくなるし、浮ついた無党派層のウケを狙った「政策」をその場その場で言っていくしかなくなっているように思う。
それにしばしば、小選挙区制をやめて中選挙区制に戻そうという議論が出てくるが、同書を読んでもそれは不可能だと改めて思ったし、過去に戻すことに何の意味があるのかよく分からなかった。
この種の議論は、小選挙区制にしさえすれば政権交代可能な二大政党制が可能となるかのような、「設計主義とも呼びうる制度改革に対する過剰な期待」と結局同じで、何の問題解決にもならない。問題は制度にあるのではなく、右派と左派の理念に分かれた二大政党がいまだに成立できていないことにあるのではないかと個人的には思う。
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宗教団体に関する文脈から、日本会議に関しても触れられているが、ネットでよく言われるような影響力は全く否定されており、これも私の印象と合致する。下に引用する。
日本会議の影響力の増大ゆえに自民党が右傾化しているといった見方は、正しくない。神社本庁、霊友会、仏所護念会教団をはじめ、日本会議を支える宗教団体の信者数が減り、集票力も減退しているからである。あくまでも結果として、自民党と日本会議の方向性が一致しているに過ぎない。(p.212)
せいぜい10万票20万票が限度の各宗教団体と比べると、衰えたりとはいえコンスタントに600万票以上の集票力がある公明党・創価学会の巨大さが浮かび上がってくる。
したがって、日本会議なんぞ問題にするより、政権交代可能な二大政党制を甚だしく困難にしている公明党を叩けよと私なぞは思うわけだが、それはできないことになっているし、リベラルに近いとされたりするので、かえって好印象を持つ人もおり、厄介だ。