ネット○○派 part373 愚民社会?  

後発的近代化論と世界社会論による愚民社会論(宮台・大塚対談)批判 : 社会学玄論

まず、宮台氏と大塚氏は、近代化をすべきだという点において、共通の目標をもっている。端的にいうと、日本社会は近代化に失敗しており、日本人は愚民のままであるという。愚民とは「任せて文句を垂れる作法」「空気に縛られる作法」「行政に従って褒美をもらう」という三つの特徴をもつという。

宮台氏は、この三つに対して、「引き受けて考える社会」「知識を尊重する社会」「善いことをすると儲かる社会」を提案し、近代化を完成させる社会的処方箋と考えている。特に、個人ではなく、地域自治体を主体とした自立的共同体にその可能性を期待している。

宮台なんて読む気ないんだけど、いや、まあ、分かりますよ。そういう素朴なことは私も思う。割に近いことを僕も言う。

さて、果たして、このような近代化の失敗が全ての諸悪の根源であるという仮説は今更成り立つであろうか?そもそも近代化が失敗したと言えるのだろうか?

結論からいうと、社会学の権威である富永健一の近代化論などの正統派社会学の立場からすると、現代日本社会は、近代化した社会であり、後期近代社会=成熟社会である。ただし、西洋諸国と異なり、後発的近代化というかたちで近代化が進んできた。

この分析からわかるように、日本社会では、宮台氏が指摘する「任せて文句を垂れる作法」「空気に縛られる作法」「行政に従って褒美をもらう」などという人々の心の習慣は最終段階で近代化されることになる。なので、社会変動論的には、後発的近代化社会においては、これは当たり前の現象なのであり、意識面における近代化の遅れの原因を日本人の文化的特性に帰属させるのは社会科学的には誤りである。

社会学にはほとんど興味がないので専門家の論宅さんの見解を尊重するけれども、宮台が今さらこんなこと言いだして興奮してるのって、原発話もあるんでしょ、結局。震災前からのネタらしいけど。

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たとえば、こないだも書いたみたいに、ちょっとまともに一般庶民の皆様と会話したら、「トーダイ」「カンリョー」へのルサンチマン丸出しのくせに、その割に全部丸投げで「今の生活は維持したいけど原発はイヤ」みたいな都合のよすぎる要求を持ち出して、自分たちの都合のよい要求を実現しない「カンリョー」「セージカ」はなんだ、みたいな議論にする。原発話だけじゃないな、これ。


政治家は所詮御用聞きみたいな面もあるとはいえ、対話集会なんかで一般庶民の皆様と政治家が質疑応答してるの聞いてると、一般庶民の皆様の無茶苦茶な言い分をよく政治家がバカにせずに聞いてられるといつも感心する。そらね。個々の政治家がいくら優秀だって、選挙で当選させてもらうのにああいうのと付き合わなきゃならない、直面しなきゃならないのはご苦労なことですよ。


だから、宮台や大塚の気分は分かりますよ、気分は。

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ただ、ネット○○派のネット右翼みたいなのはともかく、リフレ派やニセ科学批判みたいな、つまりシノドスみたいなのにうっとりしがちで割に知恵のまわりそうな、それこそ学歴はそこそこありそうな連中のやってることを見ると、結局同じなんだ。一般の愚民な皆様のことは決して言えない。


一般庶民が「愚民」なのは今も昔もたいして変わらないし、僕の個人的な感覚だと洋の東西でもそんな変わりゃしません。下手するとヨーロッパのほうが愚民度きつい、みたいな側面だってあります。


問題は、そういう一般庶民がアホなのは分かり切ってることなんだから、それなりの高等教育を受けた人たちがちゃんと責任を自覚して、物を言っていかなきゃならない。それしかないんだけど、もうまったくそうならない。


もちろん、インテリ・知識人でどこまで信用できる人がいるかというのは、これまた洋の東西で大して変わらない気はしますよ。


だけど、宮台なり大塚なり、まがりなりにもインテリの大学教授が「愚民社会」とふんぞり返って説教したって意味ないんだ。


しかも、現実には、インテリなり知識人なりは、そういう責任を自覚してないように見える上、「教養(笑)」に彩られた様々なおしゃべりに終始して、「頭がいい俺」を演出して自己満足やってるだけでしょ。「愚民社会」論だって、そういうおしゃべりのネタでしかないじゃないか。


僕がネット○○派に文句を言う時、「善男善女の皆様」はまあ仕方がないとして、問題は「愚民」をバカにしながらテメェたちだって十分に「愚民」やってるくせにそのことが分からない「高等教育を受けているはずのインテリ・知識人」たちが問題だと常々言うのはそのことなんだ。


責任があるはずなのに、責任の自覚がない。ネットのおしゃべりで「頭がいい俺」をやってりゃなんかやってる気になってる「インテリ・知識人」。こんな無責任な連中、いらないでしょ。