理屈と現実のギャップ

懐疑主義とは何か by Brian Dunning: 忘却からの帰還
このBrian Dunning という人は面白い人やね。
About Skeptoid

By profession I am a computer scientist, both as a Silicon Valley CTO and as a consulting engineer.

で、このサイトを作った発端が面白い。

A few years ago, I began searching for interesting and unusual phenomena in Internet forums and mailing lists.

できるだけ“diplomatically and respectfully ”に、問題の現象についてより相応しい説明をしようとしたら“Warning: skeptoid alert!”だの“Another debunkatron rears its ugly head.”だの食らったと。2ちゃんのスレで「空気読めや」というのと同じ感覚やな。その上、アク禁までくらってどこが“Discussion”のサイトやねんと。オモロイオモロイ。


別に攻撃的だったわけでもなく“respectful”な態度やったのに、何がいかんかったのか。

They [my posts] were much worse than that: they were skeptical.

かくして“What is Skepticism?”というエントリに至るわけだ。



だけどアメリカのをそのまま日本に持ち込んでもダメだろうと思うのは、敵のレベルが違い過ぎるからなんだな。攻撃対象としてレベルに違いがあり過ぎる。問題の深刻さ、根深さ、どれとっても日本の問題は軽微。


それでも仮に同じことやると大体みんな燃え上がってきて、宗教意識が薄い日本人がその様子を見ると「科学教だ」と反応する。たとえば血液型性格判断が「差別」だなんて言うのは甘っちょろすぎて、そういう無茶な自己正当化をしたがる根拠は何かと勘繰らざるを得なくなるわけ。


むしろ「懐疑主義という言葉の真の意味は、疑うことや信じないことや否定的になることとは無関係」云々という話ではないだろうと見られる方が当然だったりする。


こうなると本当にアメリカの議論を日本のニセ科学批判にそのままもってきて、同じ文脈で論じられるのか、論じていいのか、疑わしくなるんだよね。


Brianのエントリを読んでみんなそうだそうだと思うし、僕もそうだと思うんだけど、じゃ現実に日本のネットに適用できてますか、この「懐疑主義」の定義に納まってないのがかなりいるんじゃないですかとなると、非常に心細くなる。


それに、こういう書き方はちとずるいかもしれんな。
懐疑主義とは何か by Brian Dunning: 忘却からの帰還

懐疑主義という言葉の真の意味は、疑うことや信じないことや否定的になることとは無関係だ。懐疑主義は有効性を判断するために論理を適用し、批判的思考を行う過程である。支持する結論を見出す過程であって、あらかじめ持っている結論を正当化することではない。

こう書いてしまうと中立的かつ一般的に読めるけど、でも科学的懐疑主義ってだいたいトンデモを狙って撃破する面もありそうだね。
Skeptical movement - Wikipedia

Skeptics often focus their criticism on claims they consider to be implausible, dubious or clearly contradictory to generally accepted science. This distinguishes scientific skeptics from professional scientists who often concentrate on verifying or falsifying hypotheses created by those within their particular field

大概は最初から否定的になってるもんで(でなきゃ、わざわざトンデモやオカルトを狙ったりしない)、このへんがちょっとね、ずるい。


こういうことをつらつら考えてくると、議論はもっともで正論なのに、どうしてこうも現実とのギャップがあるんだろうと思わざるを得んのだなあ。。。

追記
気になって、もっぺんBrianのエントリを読むと、やっぱりポイントの一つはこれだなあ。

The scientific method is central to skepticism. The scientific method requires evidence, preferably derived from validated testing. Anecdotal evidence and personal testimonies generally don't meet the qualifications for scientific evidence, and thus won't often be accepted by a responsible skeptic; which often explains why skeptics get such a bad rap for being negative or disbelieving people. They're simply following the scientific method.

つまり、そこで“the scientific method”に従ってるということの限界の自覚がポイントだと思う。だけどそこらへんで素朴な人が多いように見える。この辺の呼吸が本当は難しいんだと思うんだけど(最初の一文が味わい深いよね)、なんか、素朴に信じちゃうのが多そう。