自粛期間中に読んだんだが。

ペスト (中公文庫)

ペスト (中公文庫)

デフォーの筆致で面白く読んだ。
感想は2つ。

・350年前と一緒だねー、ではなくて、21世紀にもなって、同じことをやっている人類はなんなのか。

まあでも、それはそんなものなのかも知れないが。

それよりも、

・新型コロナはペストと違う。ペストは人がバタバタ死ぬ。新型コロナの比じゃない。

なのに、ペストを連想して発狂した、あるいは発狂している連中は、頭が悪いか、頭がおかしいかのどちらかだ。

それ以上の感想を持ちようがなかった。

イタリアの知人にそちらはどうかと聞くと、

 

「イタリア人はBAKA。一番ひどいときに、高齢者施設に軽症者や不顕性の人間を放り込んで、それで年寄りがたくさん死んだ」

 

という。日本でも、東京の病院で似たようなことが起こって、入院患者が大量に死んでしまった例があるわけだが、イタリアの場合は規模が違いすぎる。

 

・・・

 

うちに医者である知人が来た。マスクしてきたが、うちは窓を開けて換気を心がけている。

 

マスクをどうしたらいいか聞かれたので、

 

「先生が決めてください。どっちでも」

 

というと、

 

「暑うて、こんなもんしてられへんわ」

 

と言ってマスクを外した。そりゃそうだろう。

 

・・・

 

この先生は新型コロナで直撃を食らった世界の開業医だが、まあ大変なんだそうで、患者が通常時のまだ半分しか来てないと。

 

患者が来ないということは売上が上がらないということなので、商売あがったりで完全な赤字、千万単位のマイナスだから持続化給付金なんて雀の涙、

 

「税金返ってくるわー」

 

とか言って笑っておられた。先生の医院は財務内容がしっかりしておられるはずなので、当面は困らないのだろうと思うけれど、これが新規開業などで多額の借入金がある病院だと大変だろうと改めて思う。

 

・・・

 

ネットで、医師らしい人たちに割に楽観的な話を強調する先生が少なからずいるのはこういう問題があるからだというのは明らかで、必ずしも公衆衛生上の観点のみから物を言っているのではない。

 

ただし、これは裏を返せば、ロックダウンしても経済的なコストの問題に十分思い至らない医師が安易に都市封鎖を唱えたり、感染予防対策として現実味を欠いた方策を言ってみたりすることと全く同じだと思う。

 

ロックダウンの損益計算をしないとならないわけだが、事ここに及んでまだ、都市封鎖にコストを超えるベネフィットがあったと信じられる人たちが存在すること自体、私には到底信じられない。

 

開業医として自分の懐を痛めながらものを考えている医者の方が、まだまともだろうと私は思っている。

たぶん、新型コロナ絡みのニュースを英語で熱心に見ている人は間違えると思う。

 


海外では今はマスクが熱心に推奨されていて、「日本の奇跡」の原因はマスク着用だとされている!みたいな話を見たので、何かと思ったら、英米の報道機関がマスクを熱心に奨めているそうである。

 

なるほど、これを日本人が見ると、世界の最先端はこれだ!マスクだ!これについていかない日本人は遅れている!と信じるのか。

 


毎度毎度言うように、海外の報道機関による日本関係のニュースは、まず信用できない。

 

それに、今回のコロナ騒ぎでは、海外メディアは一貫してパニックの増長に資していただけで、マトモな報道がなかなかないことによくよく注意するべきだと思う。メディアはほとんど邪魔しかしていない。

 

・・・

 

マスクの着用に一定の感染抑止効果があるのかもしれないが、私自身は抑止効果の程度については疑わしいとまだ思っている。

 

2月半ばに私は東京に行った。交通機関の通勤客や、ホテルの従業員たちやコンビニの店員といった人たちはマスクをしていたが、それ以外の場面でマスクを着けていた人はたいしていなかった。

 

その頃は、公衆衛生の専門家も満員電車でマスク着用の必要性を認めない、自分もつけてないと公言していたものだ。

 

私は歌舞伎座国立劇場で歌舞伎と文楽の観賞をした。年寄りがあつまる、三密注意もへったくれもないところだ。それでも、マスクをしていた人はほとんどいなかったように思う。アルコールの手指消毒はあったので、これは私もよくやった。

 

東京でこうだったが、私の身の回りを振り返ると、そもそも病院の医師の防御が普段は甘い現実がある。一般の医院でそこまで衛生を意識して経営する医院は少ない。

 

今でこそ、みな、かなり防御するけれど、手袋やマスクなど、経費を削るためにできるだけ交換しない病院は実際にある。それで豪邸を建てた医者なぞ、陰で「グローブ御殿」などと言われたりしている始末だ。

 

私のすむ街の大きな私立病院ですら不潔だと言われているので、一般的な診療所だとどうなるか、十分に察せられるだろう。

 

もっともそういう医者ばかりではない。

 

私の知人の診療所には日本でも僅かしかない高価な滅菌機があり、それが自慢だが、普通に経営だけ考えれば、診療所の規模を考えると、こんな投資は全くの無駄で自慢にならない。

 

ただ、こういう衛生意識の高い医者だと新型コロナ以前も以後も、普段の診療中の防御は変わらないが、そんな医者は極めてまれだ。

 

だいたい、医者自身が日常生活の中ではアホくさくてマスクしない。3月時点で、近所のスーパーで知人の医者を何人か見たが、マスクを着けている医者は1人もいなかった。他の客はみなマスクしているのに、だ。

 

3月上旬には医者仲間で普通に飲み会をやっていた。ましてや、医療関係者は「夜の街」が超がつくほど大好き、というよりも仕事のストレスから必要悪なのが「夜の街」だ。遠慮せずに行きまわっていたに違いない。

 

何を言いたいかというと、これで2月中に院内感染からの感染爆発が大問題にならなかった理由はなにか、と。常識的に考えれば、こういう話になるのが当然だろう。

 

これが、マスクが「日本の奇跡」の大きな原因だったとは私には到底信じられない理由だ。

 

したがって、「日本の奇跡=マスク」説が海外メディアから出ているらしいのは、メディアがいつものように日本の実態を知らないだけだとしか、私には思えない。

(追記)
ケンブリッジの研究グループが、マスクの有効性についての調査を発表して、それで騒いでいるらしいが、


上に書いたとおり、私はそれでもまだ眉唾である。マスクを全く忌避していた欧州にとって多少の意味がある発表なのだろうとは思うが。

高須先生再評価、みたいなtweetを見た。高須が当初厳しい判断をして煽ったのは、病院経営者として中国の情報を早く知ったという要素があったんだろうと思う。私の知っている大きな病院の院長も中国のリアルな情勢をキャッチしながら経営しているらしい。

 

ただ、高須先生の医師・経営者としての能力についてはよく知らない。私が耳にしている話は書かない。

 

・・・

 

医者の知人と、このレベルの感染症の流行でパニックを起こしていたら、もっときつい病気が世界的に流行したらどうなってしまうんだろうか、という話をした。

 

コストとベネフィットが全く釣り合わないことを欧州がやってしまったので、それに世界的に振り回されてしまっているのだが、ファーガソンも結局、スウェーデンと結果はほぼ同じと認めてしまった。

 

であれば、経済的なコストを考えるとどうすればよかったかという話に直ちになる。

 

そして、ロックダウンよりもより的確な対処が必要だとしているが、当然だ。

 

www.telegraph.co.uk

 

今回、欧州が非常に見苦しくて反吐が出そうだったが、彼らの対処が過剰に過ぎたのではないかと政治的に言えなくなっているような空気がある。

 

もちろん、そういうことを言う人がいないわけではないけれども、大勢は違う。

 

その代わりに、彼らは自分たちの対処を基準にして他国を裁いていったわけだ。日本はその格好の対象となった。私はこれを人種差別だと考えて、そのため変なことを言い出した友達を失ったが、しかし欧州メディアはスウェーデンに対しても同じことをやったので、単純なアジア人差別というわけではない。

 

黒人差別云々というのと違い、あの他国に対する裁き方は自分たちを一段上に置いていることを示していて、ヨーロッパの中華思想とでもいうか、そういうものが如実に感じられた。だから日本もスウェーデンもバカにできる。これが不愉快のタネだったのだろう。

日本の大手のメディアや、ネット上の「医クラ」と呼ばれる人たちが、どうして獲得免疫ベースの話しかしないのか、知人の医者に聞いてみた。


ひとつは、免疫学は基礎医学として勉強するだけで、国家試験でそんなに出ないし、内科医など免疫学の知識のアップデートが求められる分野の医師を除いては、勉強したことが頭に残っていないのだろうということ。


もうひとつは、ワクチンの問題。今、なぜか秋口にワクチンが大量に確保されるよう契約を結ぶような話が日本やヨーロッパで出ている。


常識的に考えれば、そんな急ごしらえのワクチンに本当に意味があるのか怪しいものだが、間違いないのは巨額の資金が動くことだ。


そうなると、細胞性免疫や自然免疫の話はワクチンを売るのに邪魔でしかない。だから、獲得免疫に基づいた話しかできない。


ここでばか正直に本当のことを言えるのは旧帝大クラスの研究者や、開業医など、自由にものを言える人間に限られる。


しかし中央と関係のある医師や専門家は、特に同盟国である米国の利益に反するようなことは絶対に言えない。自分の出世に影響する。感染症の専門家たちがCDCを持ち上げる理由のひとつは、自分らの出世だ。


だから現代の医師なら当然念頭におかれるべき、常識的な議論がなされえないのだ、ということだった。


これらに加えて、以下は私の所感だが、たぶん、事情はヨーロッパでも同じで、パスツール研究所の研究者クラスであれば、獲得免疫以外の話ができても、そうでなければワクチンが売れなくなるような話ができない。


イタリアに至っては論外。


ということなので、ネットで多様な見解に触れることができる私たちは、大人の事情に雁字搦めの医者や専門家たちから少し離れた物の見方をする段階に、たちいたっている。


幸い、関連する分野について、日本の研究水準は高く、それを私たち一般向けに分かりやすく説明してくれる専門家もいる。この恵まれた環境をしっかり享受するべきだろう。