以前から気になっている言説に、「日本では、経営の立場の人間がアホだが、そこを現場の人間が何とかしている」という話がある。

本当だろうか。

個人的にはこれをはなはだ疑っていて、実際のところは何ともなっていないんじゃないかと思っている。

何とかなっているならば、今の日本のようになっているわけがない。

今の総理大臣がその典型で、現場の人間が何とかしようとしたって、なんとも出来ていないではないか。

・・・

経営者よりも、「現場の人間」のほうが数が多いに決まっているが、「アホな経営 VS 頑張る現場」という構図は、単にその多数の人間の自尊心と自己肯定感を煽るだけの、甘い言葉にすぎないのではないか。

私が言いたいのは、「現場の人間」が頑張っていない、ということではない。

アホな経営・アホな上層部による無謀かつ愚かなマネジメントをなんとかするためには、「現場」ではなくてマネジメントを改善しないといけないのだから、頑張るところが違うだろう、と私は思う。

だから、いくら「現場の人間」が頑張ったところでそれは無駄かつ非効率であり、かつその頑張りの成果がどれほどのものかがはなはだ怪しい、ということにしかならない。

しかし、現実には頑張ったという事実だけは残るので、頑張った「現場の人間」たちは自分を褒めてやりたくなるし、それはそれでもっともなところだと思うが、それで本当にいいのかどうかは、私には大層疑問だ。

経営がアホだから、仕方がないから現場が頑張るというのは、それは頑張り損だ。まず、アホな経営者、愚かな上層部を何とかするのが先だろう。

・・・現実には何ともならないから困るんだ、と言われそうだ。しかし私は言いたい。そこで、負けてはいけないんだよと。そこで負けるから、思うツボにはまるんだよと。

「現場の人間」が頑張ってなんとかしたと、自分で自分にうっとりしていないで、別の道を考えた方がよいし、考えるべきではないのか。

少なくとも、そこで、別の道を考えようとする意志だけは捨てない方が良い。