子供の虐待死が出ると過激になる人が多い。そんな親は死刑にしろという人までいる。気持ちは分からないでもない。

しかし現実には、子供の虐待死は過去に比べると桁違いに減少しているそうだ。

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私は、子供が虐待で死ぬことが問題ではないとは言わないが、死なない程度に虐待されている子供・現在大人になっている元子供たちのほうがよほど問題ではないかと思っている。

彼らが受けた虐待は、親からの暴言や暴力といった分かりやすいものから、一見「親心」に見えて実は単に強烈な束縛であって明確な基本的人権の侵害を伴うものなど、私が見聞するだけでも様々だ。

もっと言えば、今、子供の虐待死に怒っている貴方がもし子を持つ親ならば、本当にあなたは子供の基本的人権を侵害するようなことをしていませんかと問いたいくらいだ。当人は「そりゃしてないに決まってる、当たり前だろう」と答えるかもしれないが、なかなかどうして、ということが世の中にはたくさんある。

そして、今現在、虐待を受けている子供たちは、将来の命が保証されていない存在でもある。死んでから問題視しても、怒ってみても遅すぎる。

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虐待された子供が受けた心の傷は、一生消えない。その子の一生を左右する。大人も子供の頃の記憶や経験が様々に作用している。

これを何とかしないといけない、というと私には荷が重すぎるのはよく承知しているが、私にできる範囲で何かしたいと常々考えていて、実際に少しだけでもやっているつもりだ。

親の虐待で死んだ子供はかわいそうだ。何とかできなかったのか、児童相談所は、警察は何をしていると言いたくなるのももっともではある。

しかし、死んだ命は帰らない。ひょっとしたら、死ねただけましかもしれない。

今現に虐待を受けている人たちにもっと意識を向けてもらいたい。そしてわが身を振り返って自分は人権侵害に加担していないか、言い訳をとりあえず脇に置いて考えてみてほしいと、私は希望している。