イタリアの五つ星運動北部同盟による連立は、やはり失敗した。パオロ・サヴォーナを財務大臣として起用することをセルジョ・マッタレッラ大統領が拒否したためだ。

サヴォーナを推したのは北部同盟のマテオ・サルヴィーニだが、サルヴィーニは「サヴォーナを大臣にするか、さもなくば選挙か」と二者択一を大統領に迫った。

イタリアの憲法に従うと、組閣は首相候補の組閣リストの基づいて大統領が大臣を任命することになっているが、リストにある名前でその通り大臣を任命しなければならないものではない。過去にもさまざまな理由から、組閣リストにある大臣候補を大統領が差し替えたことはある。

マッタレッラ大統領は欧州統合を一層推進する立場であり、ユーロ懐疑派のサヴォーナを財務大臣にすえることは、仮にイタリアがユーロから出ることは政策合意の中にも入っていないとしても、おかしなメッセージを発しうる、そのことを大統領は危惧したものと思われる。

大統領は、財務大臣の首相兼務、あるいは北部同盟の別の政治家の名前を挙げて財務大臣にするよう提案し、なぜそうしないのかと言ったが、サルヴィーニはこれを拒否。

この結果、ジュゼッペ・コンテは組閣を諦めた。大統領はただちにカルロ・コッタレッリに組閣するよう任じた。

五つ星運動ルイージ・ディ・マイオは連立内閣を崩壊させたのは大統領だ、憲法違反だ、弾劾だと息巻いているが、どこからどう見ても、大統領に二者択一を迫って脅迫したのはサルヴィーニで、意図的に組閣を潰したものと思われてもやむを得ない。ディ・マイオもサルヴィーニも責任を他人に押し付けることに終始している。

コッタレッリは組閣名簿を速やかに作って議会の信任を得たい考えだが、コッタレッリは議会の信任を得た場合でも予算を通したあとには辞任、2019年に選挙をすると言っている。しかし、おそらく議会はコッタレッリ内閣に信任を与えないものと予想される。その場合は選挙管理内閣となり、夏休み明けにも選挙を行う模様である。

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混乱した情勢が続いているので、このところ、私はイタリアの討論番組をよく聞いているが、そのなかで、ユーロ懐疑派の人の主張が大変に面白かった。ことあるごとに、「スティグリッツ」の名前を出す。

スティグリッツはこう言っている、スティグリッツノーベル賞をとっている学者だ、スティグリッツは云々。

もちろん、経済学者はスティグリッツ一人ではないし、ノーベル賞をとった経済学者も彼一人ではないうえ、アメリカの経済学者が机上の空論で政策提言のようなものをするのはどうも無責任きわまりない所業らしいということは、FRBの議長をやったバーナンキが最初鼻っ柱が強かったのに、だんだん萎えてきたあたりでも知れようものであることは、このブログでも何度か取り上げた。

日本に対してやった同じことをアメリカの経済学者は欧州相手にもやっていて、それを欧州の扇動家たちが利用しているという形に注意が必要だと思う。

本当にろくでもない。