塩野七生の新刊書の宣伝を見ると、いつも思う。あなたに書いて欲しいのはそれじゃないと。

イタリア政治ウォッチャーの塩野は70年代、イタリア政治事情に関する随筆をまとめた本を何冊か出していて、これが面白い。当時、イタリア共産党が政権入りするかどうかと言われた頃で、右派の立場から当時の空気を良く伝えている。

たとえば共産党書記長だったベルリングエルにあてた質問状と、文体模写した予想回答、さらにその回答を大ジャーナリストだったモンタネッリに見せて、一杯食わした話なぞ、大層笑える。

塩野は、アメンドラやアンドレオッティなど、当時の大物政治家とも接触していたらしい。そういう日本人でかつ、物を書ける人は極めて少ないはずだと思う。

だから、塩野は、もう歴史物でたんまり儲けたんだから、死ぬ前に、昔のイタリアの政治家の思い出を書いてほしいと念願している。そんなものをまとめて書けるのは、もう塩野しかいないはずだから。絶対に面白いに決まっている。

でも、塩野は書かないし、書かせてもらえないだろう。そんな本を読みたがる人は少なすぎて売れない。売れるわけがない。

でも、それを書いてほしい、書くべきだ。古代ギリシア史や古代ローマ史なんてどうでもいいからと。私はそう信じている。これは以前、twitterに書いたが、ブログに書いておきたかった。こういう声もあるんだということを残したいので。