小沢一郎あたりが、いまだにイタリアのオリーヴの木をやろうと言うことがある。これが、単に「反自民」勢力が結集しようと言っているだけのように聞こえて、私にはまったく物足りないし、そもそも「オリーヴの木」に対して失礼ではないかとかねがね思っている。

「オリーヴの木」は冷戦が終わったイタリアで、それまであった主要政党が政界スキャンダルで軒並み消滅したことが背景にある。その時、実業家のシルビオベルルスコーニが名乗りを上げ、中道右派を率いて政権を担ったが、これもスキャンダルなどで苦境に陥った。そこで紆余曲折を経て、中道左派が結集した。

「オリーヴの木」の創設者で代表だったロマノ・プローディの回想によると、専門家たちで政策要綱をまず作り、それを掲げてバスでイタリア中を巡った、最初はたいして期待していなかったようだが、思いがけず大きな波となって政権を奪取した。1996年のことだ。

これは単に政党を寄せ集めたのではなくて、最初に核となるべき政策要綱などを決め、かつ産業復興公社のトップを長く務めたプローディが行政にも精通した経済学者だったことに意味があった。プローディ曰く、若い経済官僚などがやってきてあれこれ言っても、自分のほうがイタリア経済とその現場についてよく知っているので、言い返せてしまう、のだそうだ。

つまり、単なる寄せ集めではなくて、かなり周到に準備され、人も揃った構想で、日本で「反自民」という雑な括りで野党が結集しようという半端な話とは比べられない。

もっとも、いまではイタリアでも「オリーヴの木」なぞ今は昔の話であって、左派がまとまることは様々な事情で困難なことになっている。たまに「オリーヴの木 2.0」などという話が出てくるが、現状ではとても無理そうである。

イタリアでもこの通りなので、日本に話を戻すと、自民党が右派の理念を掲げて差を付けようとしているのであれば、左派の理念をしっかり構築していかないといけないのだろうし、専門家たちはそういう話も随分しているのだろうと思う。

安倍さんの周辺の保守派には、私はもうついていけないので、そろそろいい加減にしてほしい、なんとかしてほしい。そのためにも、左派の理念を打ち立てることが必要になるはずなのだけれども。。。