麻生太郎が吹いた、「武装難民」に対する対応の問題(そもそもこの「武装難民」というのが何を指すのかよく分からない)で、いつものような光景が展開されて不愉快だ。

特に右サイドに「そりゃそうだろう」みたいな反応が多く、ちょっとお話にならない。「武装難民」とやらがやってくる状況とか可能性とかってどうなんだ、と思っていたら、木村幹がそこはさすがに朝鮮半島の専門家だった。

なんでも政権叩きに使えるなら使えばよいと思っている左翼はバカだと思うが、茶化して「反論」すればいいと思っている側も愚かだ。

自衛隊が出動しなければならないような「難民」がやってくる状況を想定する前に、より常識的なことを考えるのが先だし筋だろう。麻生太郎も一応はその問題にさすがに触れてはいたらしいのが救いだ。
https://mainichi.jp/articles/20170924/k00/00m/010/097000c

「難民が船に乗って新潟、山形、青森の方には間違いなく漂着する。不法入国で10万人単位。どこに収容するのか」と強調した。その上で「対応を考えるのは政治の仕事だ。遠い話ではない」と述べた。

たとえば難民が来たら、まず収容して身元の同定などなどをしないといけない。仮に麻生が言うような規模の難民の場合は当然、一部の自治体だけにその負担を押し付けるのはおそらく不可能なので、47都道府県全体で負担しないといけなくなるのだろうが、その了解は各自治体からとれるのか。収容施設の場所はどうする、近隣住民は反対するだろう、多数の人員も必要だ等々、問題が多数ある。

つまり、より可能性が高い、具体性のある問題がいくらでもあるはずで、そこで問題提起をして国民の間に意識を向けるとか議論を喚起するということなら分かる。

しかし、きわめて可能性の低い事態をいきなりぶち上げてみても、あるいは「武装難民」なる言葉が意味不分明にすぎ、ほとんど意味がなく、戯言にしかならない。

だから、口の軽い麻生太郎が「武装難民」の可能性を挙げたのは、単に選挙前で「危機」を煽っているだけにしか見えない。批判するならまずそこだろう。朝鮮半島情勢を選挙に利用せんとする意図があまりにも露骨で、合理性を欠いた議論をするなと思う。

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これでは、朝鮮半島情勢に対する右翼の煽りは、福島の放射能の「危険性」を煽る、左側の人たちと変わらない。もちろん、可能性の問題としては、朝鮮半島危機のほうがはるかに危険性が高いかもしれないが。

しかし、どちらも、合理性を吹き飛ばして、ひたすら「危険」を煽り、政治的に利用して動員しようとするところは同じで、これでは、右翼に左翼を笑う資格は一切ないではないか。

しかも、煽りのネタが安全保障に関する問題なんだから、あまりにも古典的すぎる。それでよく左翼を笑えるものだ。

だから嫌なんだ、ネットの議論は。