・1
finalvent さんがこんなのをRTしてるんだが。

https://twitter.com/obiekt_JP/status/912295624292261888

JSF @obiekt_JP
全世界の難民の武装化の割合は15〜20%。 http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.357.3212&rep=rep1&type=pdf … 根拠の無い願望だけで「多分〇・一%もいない」と具体的な数字を口走るのは、ちょっと不味いだろう。 

ちゃらっと見ただけだが、ようはアフガニスタンなどで武装した難民が帰国してまた戦闘行為をしているのはなぜか、という研究の報告で、英語も refugee warrior であって、たとえばmilitarized refugee のような言い方をしてないのは、おそらく意味がある。

具体的なイメージとしては、内戦状態になった国で反政府組織のようなコミュニティ・グループが武装したままいったん国外に出て、そこで訓練をしたり自分のテリトリーを確保するために戦闘行為などをするんだろうが、そうして元の国に戻ってさらにまた戦闘を行う、ということなのではないか(じっくり読んでないので、大雑把なのはご容赦)。

で、問題は、北朝鮮アフガニスタンルワンダのような内戦状態になったような国になって、そこから武装集団がわざわざ日本に流れてきて、日本でゲリラをやるか、ということで、だから木村幹もこういう書き方をしている

もちろん、山崎雅弘が思い付きで適当に言いすぎているわけだが、そうは言ってもこの報告書の数字にどの程度の意味があるのかはまた別の問題で、北朝鮮に当てはまるのかどうかはよく分からない。アフガニスタン北朝鮮とを同列には並べられないのではないか。

つまり、全難民の15%から20%が「武装難民」だ、山崎はおかしいと主張しても、それがどうしたの、としかいえない。

むしろ。

このtweetだけ読むと、北朝鮮からもこれくらいの割合で「武装難民」が出てくるかのように普通は読めてしまうし、そう読めるように書いている。

しかも1フレーズだけ抜き出す格好で、それらしい研究報告からの引用なので、鵜呑みにされて、「根拠の無い願望」ではない数字として独り歩きしかねない。

これでは、「JSFデマゴーグ」と言われてもやむを得ない。少なくとも、山崎に呆れる資格はない。

なんでこんなものをパッとtweetできるのか、RTできるのか。

いい加減だというほうがよほどいい加減なのに、よくも人のことをいい加減だと言って、危機感だけ煽って印象操作できるものだ。ネットのプロパガンダ合戦には、もううんざりだ。



・2
ベネデット・クローチェのファシズムについてのエッセーを眺めていたら、ピーター・ドラッカーの名前が出てきたのでびっくりした。

私はドラッカーを一冊も読んだことがない。それでも、ドラッカーの問題意識がファシズム全体主義にあったことは知っているが、クローチェがドラッカーの「経済人の終わり」を読んでいたというのはやや不意打ちのような感じがした。レンツォ・デ・フェリーチェの le interpretazioni del fascismo にはドラッカーの名前はたしか出ていなかったこともあって、油断をしていたらしい。

落ち着いてみるとそうおかしいこともないわけで、クローチェの目配りの広さに感心するべきなんだろう。

・・・

日本だとドラッカー経営学・ビジネスに関する本で有名で本屋に行けば必ずあるけれども、ドラッカーは広く読まれているらしいのに、日本の全体主義的な空気、軽いファシズムっぽい空気に疑問や違和感は持たれていないのはなぜなのだろうか。

クローチェの引用から察するに、ドラッカー全体主義に対する考え方にはおそらく様々な異論がでるんじゃないかと思う(ちなみにクローチェは好意的に引用している)。ファシズム全体主義とは何かという問題の間口は大変に広く、いろいろな解釈が可能だ。

しかしドラッカーを読もうと思えば、その根っこの部分にある、全体主義ファシズムに対する批判や問題意識が大事なはずであって、そこを無視して経営学もビジネス書もないのではないか。

そうすると、本当ならば、日本の軽いファシズム全体主義の空気はおかしいとどこかで気が付き、また日常生活にもその気づきが反映がされるはずなのだが、そうはなっていなさそうに見える。

これはどういうことなんだろうか、という疑問を持った。