玉井克哉先生は政治的に右なのはまだしも、余りにも左派への揶揄がきつすぎるので、もうご専門だけしゃべっておけばいいのにとは随分以前から思っているが、さすがにこれにはびっくりした。

https://twitter.com/tamai1961/status/899937946949767168

玉井克哉(Katsuya TAMAI)
レーガンは、欧州に中距離核ミサイルの配備を進めた「タカ派」でもあった。報復用の攻撃型核ミサイルですよ。防空用の迎撃ミサイルではない。しかもそれを、ドイツ宰相のコールは、国内に受け入れた。こんにち、迎撃ミサイル・システムの配備に反対する勢力が韓国や日本にいるのは、隔世の感がある。

政府レベルの決定と、野党や世論などそういうレベルではない「勢力」を対比させようとすることがまず無茶なわけだが、そもそも、ソ連に対抗して相互に軍縮する交渉を進めながら、中距離ミサイルを配備するとした、1979年のNATO二重決定に基づくミサイル配備は、実際のところすんなりいったわけではない。

1979年当時の首相はヘルムート・シュミットだが(コールが首相になったのは1982年)、ここは英語のWikipediaから借りる。
Helmut Schmidt - Wikipedia

This decision was unpopular with the German public. A mass demonstration against the deployment mobilized 400,000 people in October 1981.

つまり、この決定がドイツ人には不人気で、1981年にはミサイル配備に反対するデモが40万人を動員したという。

ついでだから、ヘルムート・コールの日本語のwikipediaを見てみよう。
ヘルムート・コール - Wikipedia

コールが最初に取り組んだのは、ワルシャワ条約機構に対しての抑止力となるNATOの軍事力強化(ミサイル配備)で、国内での平和運動が盛んになる中、これを実行した。

なんのことはない。そういう「勢力」は普通に存在していたうえ、しかもミサイル配備は不人気だった。そこを政府が断固として実行したわけだ。

今の日本に「迎撃ミサイル・システムの配備に反対する勢力が韓国や日本に」いてもおかしくないし、これをを揶揄することに、玉井先生のtweetでは何の意味もない。揶揄できているとご本人が思っておられるのであれば、かなり痛々しいのではないか。もっとも、私は「迎撃ミサイル・システムの配備」には賛成だけれども。

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私はたしかに左翼が嫌いで、とりわけ教条的な左翼は特に大嫌いだ。しかし、それでも近頃の左翼に対する揶揄に警戒したほうがよいと思っている。というのも、過度に左翼を揶揄した先にはファシズムしか待っていないことを、ファシズムの歴史が証明しているからだ。

ファシズムが政権をとれた大きな理由は、左翼が政権をとることの恐怖から、支配層資本家層がファシズムを利用したという事情による。これを忘れてはならないと思う。

もちろん、今の時代に100年前と同じことはできない。100年前のように、共産党の暴力革命の危険性は切迫していないし、右翼が徒党を組んで物理的な意味で暴力をふるっているわけでもない。

とはいえ、無茶を言って左翼をバカにすることに何の意味があるのかというのは疑問に思わざるを得ない。

無論、左翼の東大の教授が右翼を無茶苦茶に揶揄してもかまわないというわけではない。政治的傾向が異なるだけで、右も左もやっていることが同じだ、そのことがただただバカらしいのである。