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ただ、安倍内閣を擁護する人たちの反撃のネタ、煙幕として使うのはいかがなものか。
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話はそれるが、私は、現在の民進党(旧民主党)の低評価の根拠となっている、民主党政権の評価が低すぎると考えている。
しばしば、震災後の原発事故対応がやり玉にあげられる。問題も多かったはずだと私も思うが、一つには当時の民主党は政権交代してからまだ時間がたいして経っていなかったことを考慮するべきだと思う。彼らの対応力をはるかに上回る災害・事故が一度にやってきたが、そういう「非力」な政権を選んだのは国民であって、最終的な責任は国民にある。それが国民主権というものだと思う。
第二に、にもかかわらず、民主党政権は東日本大震災のあの危機から、おそらく戦後日本が体験したもっとも深刻な危機であって、あえて言えば国家の存亡がかかっていたと思うが、その危機から我々を曲がりなりにも脱出させた。今、こうやって民進党の悪口を言えるのは、実は民主党政権のおかげであることを忘れてはならない。
これについては、阪神大震災の際に、社会党の村山富市が首相としての対応を過ったという批判に根拠が薄いことをあわせて想起するべきだ。左翼叩きのためならなんでもありだとは、私は思わない。
第三に、仮に自民党政権下で同じような災害と原発事故が発生したとしたら、今ごろ自由民主党は国民からの信頼を完全に失って雲散霧消しているに相違なかった。つまり、自民党サイドが民進党の現状をあれこれいう立場には、全くない。
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そのうえで、安倍政権に対するメディアの偏向ぶりを云々する声をこのごろよく見る。おそらく、政権支持率の急落を受けて、支持を失った理由をメディアの責任にしたいのだろうが、これもいかがなものか。
そもそも、いずれの国でもそうだと思うが、メディアというのは偏向しているものだ。しばしば朝日新聞の偏向ぶりが揶揄されるが、同様のことは産経新聞にも言えることであって、その揶揄は故ないことではない。
私の印象では、日本のメディアは全体としてひどすぎていて、読者・視聴者の顔色を見すぎており(受けることを言わないと商売にならない)、メディアとしての機能を十分に果たしているとは言いにくい。
そこでだが、安倍政権の支持率が下がったのはメディアの影響だとしたら、支持率が高かったときはどうなのか。支持にしろ、不支持にしろ、メディアはやっぱりいい加減なことを言うのであって、支持率が下がった局面になってメディアの報道を云々するのは、それは違う。
あえて言えば、メディアがそういう「偏向」なり、情報の取捨選択をやるのは、ひとえに情報の受け手サイドがそういう情報を欲している、そういうふうに書いたほうが受けるから書くのであって、これは鶏が先か卵が先かの話になるかもしれないが、しかしそういう面を捨象してしまってはいけないだろう。
もちろん、情報の受け手サイドの顔色を過剰に見ながら情報発信をすることそのものの是非はあり、私はそれに対して非常に批判的に考えている。むしろ、日本に軽い全体主義の空気が漂っている原因の一つがこれだとすら思う。
しかしそれとこれとは全く別の問題だ。安倍政権の支持率が高いときも低いときも、メディアは偏向しており、いい加減なのである。