目くその自覚なき右翼が、鼻くその左翼を笑って勝ったと思っている愚劣

右翼は左翼に勝った、というような議論がこのところ散見される。右サイドが左サイドを党派的に下に見て省みないようである。

さすがに、これは全く耐えられない。

たとえば、「放射脳」「反原発」の「サヨク」を馬鹿にする。ついでに、左派に近しい話題をまとめて批判する。この批判の仕方が、批判の理屈が、自分にはとてもじゃないが耐えられないし、見てられない。アンフェアに過ぎるにもかかわらず、自分たちのほうが優位であり知的であると信じているのだから、愚劣も極まっている。

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私はこれまで、ネットの徒党というものを見て、自分もそういう徒党の一部であった経験とその反省から、これはいやなものだと思い、かつ文句を言ってきた。政治的には自分は右寄りだと思うが、それでもネット右翼をずっと批判してきたし、そもそもニセ科学批判はおかしいと言い出したのはネット右翼批判や政治系の話題に飽きたからだ、ということも何度も書いてきたところだ。ネットの徒党の問題として、ネット右翼と同種の問題をニセ科学批判にも見たから、だから文句を言い続けてきたし、これからも言い続ける。

その延長線上で、ネット・リフレ派はおかしいと、これも繰り返し繰り返し書いてきた。経済学上のリフレ論としては、判断が自分にはできないので、専門家のみなさんに議論していただくとして、それにしてもリフレ派を指導している学者や元官僚などの肩書がある人たちや、それを支持する人たちが、あまりにもおかしいじゃないか、ということを言ってきた。そのおかしさを糊塗してるのが党派性の問題であるわけで、それでネット上の徒党の問題として扱うことができた。

そして、ネットの徒党を批判する以上、自分でも徒党を作る、仲間を作ることを基本的には消極的であったつもりだ(もちろん、自分も人間だから、理解者がいたと思えば素直に喜んだが)。

ネット・リフレ派がどういうおかしいことを言ってきたかは、散々書いてきたところであるから繰り返さない。

しかし、リフレ派が、たまたま「切れば血の出るリアルポリティクス」とやらで右翼を取り込み、その結果として単に党派的な根拠から、リフレを支持する右派が、リフレ派がどういうことを言ってきたかやってきたかを棚に上げて、左派を「『放射脳』『反原発』の『サヨク』」と言って上に立ったつもりでいる、「右派が左派に勝った」つもりでいるというのは、もうばかばかしいにもほどがある。我が身を反省する、あるいは支持する言説にいささか懐疑の心を持つということが一切ない人たちが、「サヨク」をバカにしているのだから。

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今これを書いているのは、朝日新聞に載った小熊英二のコラムに対する反応があまりにもおかしいからだ。小熊英二は、タイトルに「(あすを探る 思想・歴史)」とある以上、あくまで素人として、雑感を適当に書いているだけだ。もちろん、その中身の当否の議論はあると思うし、自分も賛成ではない。しかし、「これだから朝日は、左翼は」という声が出ているのを見ると、ちょっとお前らなあ、と言いたくもなる。

というのも、リフレ派を指導してきた人たちは、専門家の肩書でもって信用があるように見せかけたうえで、あることないことを言いまくり、一般人を煽ってきており、記憶に新しいところでは消費税増税のおりには財務事務次官に対する「手配書」を回すという悪質な扇動をやっていたのであって、それに比べて素人が素人として書いたコラムとどちらが罪深いのかというのである。

素人とはいえ、慶応大学の教授であり、それなりに名を知れた人物で、媒体は天下の朝日新聞だ、と言われるかもしれないし、それはよく分かる。しかし、リフレ派のこれまでの言動と比べて、小熊英二を馬鹿にする気にはとてもなれない。

どんぐりの背比べ。目くそ鼻くそを笑う。何とでも言えるが、この不愉快さは、自分たちはまともなつもりで「目くそ鼻くそを笑う」をやっているという自覚を「ウヨク」サイドが全く持っていないところから来ているし、私自身、右派だと自認しているので余計に不愉快だ。

だから、この不愉快極まりない愚劣な右翼どもを、罵倒せずにはいられないのである。