黙っていられないこと part18

件の佐野眞一の連載で一か所面白い部分があったので引いてみようと思います。


それは橋下の実父「ピッキャン」をよく知る、縁戚の人物とのインタビューです。あるとき、博打場に呼ばれたらピッキャンが喧嘩をはじめたと。

ケンカの相手は無期懲役で仮釈放されよった男やったけどな。その男が女に手を出そうとした時、ピッキャンが血相変えて相手をどつき倒したんや。橋下がテレビで相手をめちゃめちゃ言うて負かしてしまうのは、ピッキャンの血や。

これが面白いのは、一つは「橋下がテレビで相手をめちゃめちゃ言うて負かしてしまう」と表現している点です。橋下が決してロジカルに物を言って議論しようとしているのではないと、この八尾のおっさんは直感的に理解していることが分かる。


ジャーナリストの上原善広さんも面白い指摘をしていて、
http://u-yosihiro.at.webry.info/201210/article_8.html

彼は演説、討論はテレビで鍛えていますから得意でしょうが、文章でのやりとりだと馬脚を現すので、とくに活字メディアは苦手なようです。

と書いています。橋下に対する評価に関して上原さんとは私は全く異なるわけですが、この指摘が面白いのは弁護士の橋下が文章のやり取りがダメだということを端的に書いてしまっている点で。。。文章で馬脚を現す弁護士。


逆に言えば、いかに彼がその中身を他の要素でカヴァーしているのかということがうかがえるわけです。


どうも世間には誤解があって、彼は「ディベート術」がうまいと思ってる人がいるように見受けられるんだけれども、決してそうではない。彼はディベートがうまいのではなくて、とにかく相手を黙らせるのがうまいのです。ただし、相手が黙るというのは同意や敗北を意味するわけでも、また黙らせた側が正しいわけでも必ずしもありません。議論するのが面倒だから黙るというのは、よくあることです。


八尾のおっさんが「めちゃめちゃ言うて負かしてしまう」と表現しているのも、まさにこの点です。


他にも、八尾のおっさんの目から見てこの彼の性格が「ピッキャンの血や」とあっさり認めてしまっているところもとても興味深いわけですが一応それは置いておいて、この話、もう少し続けます。

追記
これは蛇足ですが、実の親と接触がなくても自ずから似てくる部分が出てくるというのはままある話で、そこが人間の面白さの一つでもあろうかと思います。


ところが、一件の直後は橋下の言い分に煽られて、親族の影響なんか小さいに決まってるみたいなことを言う人が続出したように見受けられました。率直に人間を知らない人たちが多いなぁと私は感じました。


もちろん、親がこうだから子もこうだと因果関係を簡単に断定するべきではない。とはいえ、そういう要素を見てみることがある人間の理解につながる場合もあるとすれば、ただ否定すればいいというものでもない。「分からない」わけですから。


現代人ぶって建前でしらばっくれる人たちに対しては、普段の会話を盗み聞きしてみたいものですね。