まとめwikiの利用は難しい

局面がころころ変わるので厄介だった。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110812/crm11081222320021-n1.htm
なんかいろいろ意見が出ているが、まず「当事者たちがやりたいか、やりたくないか」があって、「やりたい」のであればやればよろしいのだ。で、問題があれば、問題を解決するようにして実行すればよいし、解決できないのであればできない、ということでしかない。


で、どうもよく分からないのは、検出された「薪」というのが、もともと使う予定だった護摩木とは別だったらしい点が一つ。産経によると、

連合会では、市が新たに取り寄せ、11日に到着した被災松について「大文字保存会が当初、送り火で燃やそうとしていた被災松のしん部分だけを使った護摩木と同じ物と考えていた」という。

僕も、同じものだろうと思ったのだが、別の薪がきたらしい。その薪の、表皮と内側を検査したということは、朝日新聞にのっている。
http://www.asahi.com/national/update/0812/OSK201108120098.html

 薪は、市の要請で協力した陸前高田のボランティア団体などが500本を集め、11日に京都市役所に運んだ後、市が民間の検査機関に依頼。検査は、すべての薪の表皮と内側を一部削り取り、それぞれ一塊にして調べた。その結果、表皮のみ1キログラムあたり1130ベクレルの放射性セシウムが検出されたという。

護摩木には当然皮はついてないが、京都市が新たに運んできた「薪」は皮つきで、その皮に放射性物質がついていた。。。そりゃそうだろう。


これに対して、

放射能に詳しい地元の大学教授に聞くと、「燃やしていいか判断できない」との回答だったという。

放射能に詳しい」という表記に脱力するわけだけれども、たぶん、素人考えだと「皮を取れば問題ない」が正解なんでしょうが、500本の薪の表面だけとるには、手間だしもう時間がない、タイムアウト、ということなのかなと想像する。


・・・で、元の護摩木はどうなったの?これがよく分からない。

例によってまとめWikiなるものができているわけだが、これがどうも。
http://www14.atwiki.jp/kyoto-henkouhoudou/
これによると、元の護摩木は8日の晩に「送り火」としてすでに焚かれてしまっているようで、だったらこれで話は済んでいる。これはこれで美しい話として終わらせておけばよかったのだと思う。悪くない。


ところが、なんかよく分からんがこのまとめを見ていると、別の話ができあがっていて、そこに新聞記事やTwitterやらをはめ込む形で、そういうストーリーはひょっとしたらあるのかもしれないが、読みすぎだろうと今のところは考えざるを得ない。


別のところでも見たんだが、「京都バッシング」という単語を見た。最初、意味が分からなかったんだが、このまとめwikiを見てようやく分かった。ようするに、「抗議・疑問の声をあげた京都市民は正当だ」「市民の声をまげて伝えるマスコミは偏向している」ということが言いたいんだと思う。


また、京都の伝統を尊重してないというに至ってはもう本当におかしくて、保存会の人たちがやりたいと同意したんだったらそれでよろしいという話でしかない。


さらに、どうにも理解できなかったのが次の記述。
http://www14.atwiki.jp/kyoto-henkouhoudou/pages/21.html

放射性物質というのは「これから放射線を出すもの」であり、吸入摂取や経口摂取によって体内に取り込まれ内部被爆する可能性があるものです。空間線量と並列にして話題に出すものではありません。
また空間線量が高低にかかわらず通常より高い線量にさらされるようになることが問題なので、他の地域に放射性物質付着の可能性があるものを運び出すべきではありません。

いや、関西の人はよく知っているはずなんだが、毎年黄砂がすごい。で、放射性物質も一緒に飛んできてるのは常識で、そういう空気をみんな吸ってるわけです。中国ネタだから、なかったことになってるのかもしれないが。


しかも、「他の地域に放射性物質付着の可能性があるものを運び出すべきではありません」って、だったら、車も農作物も一切東北から外に出すなって話です。僕はこの部分が全く理解できなかった。


というか、典型的な「放射性物質=穢れ」発想まんまじゃないんですか。

つまり、ある文脈を前提にしないとこのまとめwikiって理解できないようになっています。で、その文脈を理解したうえで、自己正当化を図るためにこのまとめwikiが書かれているのであって、まとめでもなんでもないです。正直言って、こういうものを「まとめ」としてTwitterで拡散してもらいたくないわけです。


こういうものを書くなとは言わないですよ。でも「まとめwiki」って書くと、誤解する人は必ずでます。

朝日の次の記事によると、
http://www.asahi.com/national/update/0812/OSK201108120201.html

 一連の問題で、市には11日までに約2千件の苦情や批判の声が殺到。今回の決定を受け、12日夜までに130件の声が寄せられた。「断念して安心した」という声が多く、中止を批判する声は少なかったという。

とある。


芸術家の思いつきから始まったことにすぎないかもしれないが、別に悪いことではなかったし、保存会の人たちも同意したんだったらやればよかった。素敵な送り火になったに相違ない。


しかし、現実には、「放射性物質=穢れ」イメージに振り回される人々の愚劣さという、後味の悪い結果しか残らなかったように見える。