ネット○○派 part255 「正しく怖がれ」なんて言えるネットの住民ってどれくらいいるんだ???


「正しく怖がる」という言い回しをよく見ます。で、寺田寅彦の本来の言い回しや文脈はさておくとしても、いささか呆れています。


・・・ホメオパシーであれだけ大騒ぎした人たちが本当に「正しく怖がれ」なんて他人に説教する権利ってあるのか?

ビタミンK2の話だと、全出産数の1パーセントが助産院などの出産で、さらにそのうちホメオパシーを利用する助産師がいて、さらにさらにビタミン不足で問題が起きる可能性が2000分の1とか4000分の1とかだった。


ビタミンK2以外の話でも、全体から見たらおそらくそんなに大きくはないだろうとはこのブログでも書いたところ。


他方で、今大騒ぎになっている放射性物質のほうは、影響を受ける人間ははるかに膨大で、数は少ないかもしれないがガンになる子供は増える「かもしれず」、しかもそれが放射性物質の影響かどうかは結局よく分からないんだから、ホメオパシーよりずっと大きな問題であることには違いないわけだ。


ところが。


ホメオパシーに関してあれだけぎゃんぎゃん騒いだ人たちが、放射性物質については「正しく怖がれ」という。ホメオパシーに関して「正しく怖がれ」なかった人たちが本当にそれを言えると思ってんの?

常識的に考えてホメオパシーを「正しく怖がる」とすれば、しかるべき筋がアナウンスして、あとは個人の判断にゆだねればよい話で、問題が大きい場合は行政なり警察なりが動けば済む問題だというのは、何回も書いてきた。科学の立場でなんか言えるということに限界があるというか、そこを超えているのにそのことに自覚が全くない、「詐欺はよくない」「人が死ぬ」という通俗道徳と科学の正誤をごっちゃにして、自分たちの正しさに疑問を抱かなくなったのがニセ科学批判。


放射性物質の場合は、自然科学関係の学者先生たちは素直に解説やアナウンスに徹していて、個人的には特に異存がないし、少なからぬ人たちがさすが専門家だなと思うのももっともだと思う。


ところが、ニセ科学批判の立場になるとどうにもならんのですよ。


武田邦彦なり早川由紀夫なりをバカにするのは簡単ですよ。とくに早川先生の場合はどうも火山学者としての経験から反省があってそれで過剰に煽ってるらしくて、そこを考えないと理解できないんだけれど、ともあれ、表面上はあれと同じポジションをニセ科学批判の人たちはとってたじゃないかと。


しかも、子供が死ぬとかすぐ言ってたでしょう?今、放射性物質で騒いでる人たちと、やってることは全く同じだった。ホメオパシーネタで「正しく怖がる」ことができなかったのは、ニセ科学批判の人たちだった。


・・・こう書くと、放射性物質で騒いでる人たちはそもそも科学的根拠が薄いが、ホメオパシー批判は違うと言われるかもしれんがね。


なら、漢方や鍼はなんで擁護したんだという、そこに行っちゃうわけです。科学的根拠が薄いものを擁護した人たちに、放射性物質で騒いでる人のことを本当にあれこれ言えるのか。

そう考えたら、いま「正しく怖がる」ことを推奨している人たちのうちどれだけの人に、他人に「正しく怖がれ」と言えるんだろうかと、僕なんかはそう思いますけどね。


で、「リフレ派」なんかよりたちが悪いのは、ニセ科学批判絡みの人はぱっと見もっともらしいから、それで信用されてしまって、その勢いでニセ科学批判まで信用されかねないところね。専門家としての見識は参考にされるべきではあっても、ニセ科学批判の話になるとダメだってのが、理解されてるのかどうか。

つまり、「正しく怖がる」みたいなフレーズを持ち出すのは構わないけれど、もう非常に都合よく使われてしまっていて、結局自分たちが正しいポジションにいるための道具にしかなってないように見えるし、事実そうなんだと思う。ホメオパシーでは「正しく怖がる」ことをせずに、放射性物質で「正しく怖がれ」というダブル・スタンダードって、奇妙ですよ。


しかも、やってる当人たちにその自覚がなくて善意だけなんだから、余計に厄介。読み手の側も、そのあたりをもうちょっと考える必要があると思うな。