ネット○○派 part237  呆れ

saebou on Twitter: "今度の件で一番風評被害を被るのは科学だと思うけどね。安全だろうと言われていたのにこんな大きな事故が起こったら、もう誰も核物理学者の言うことなんか信用しなくなると思うよ(真面目な学者も割を食うに決まっている)。そこにニセ科学の推進者たちがつけこんでさらに悪いことになる。"

今度の件で一番風評被害を被るのは科学だと思うけどね。安全だろうと言われていたのにこんな大きな事故が起こったら、もう誰も核物理学者の言うことなんか信用しなくなると思うよ(真面目な学者も割を食うに決まっている)。そこにニセ科学の推進者たちがつけこんでさらに悪いことになる。

同じことを僕も考えていたんですが、もうちょっとよく考えてみることも必要かなと思っています。


一つは、「科学」そのものの信用性が絶賛暴落中でありますので、「科学」の信用性を借りた「ニセ科学」も同時に使えなくなるだろう、ということ。


言い方を変えると、「科学」の看板の限界がこれほど分かりやすく素人にも伝わったことはいまだかつてなかったので、「科学的に証明されています」と言われても「ほんまかいな」と懐疑的な発想が自然にできてもらわなくては困る。そういう状況にもうなっている。


ただ「トンデモ」の類はありますよ。ニセ科学批判(また海外の擬似科学批判も)が議論しているように、まともな学者ほど断定してくれず、慎重な物言いに終始する。そこにつけこむ「トンデモ」や「デマ」が煽りにかかるし、実際ただいま現在はそうだと思う。


放射線の影響を過少にしか言わない!」みたいな話はそれですよね。ちゃんと話を聞けば分かるんだけど、まだまだ不安だから不安を肯定してくれる言説のほうについていく。

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もう一つは、科学リテラシーだなんだいいながら、結局消費者問題と糾弾活動に走っちゃったニセ科学批判の無力さですよね。


いや、今回の件では物理学クラスタの先生方を非常に頼りにしてるし、えらいことだありがたいことだと思ってもいるんだけれども、ま、僕はそれなりに科学を信用してるからよろしいですよ。過剰に噛み砕いてもらわなくても、普通に言ってくれたら大体分かるし。


でも、Twitterを見渡すと、もう全然というか、まず理屈だてて考えて学者の言うことを汲み取ろうとする人が多くないようで、あるいは記者会見なんかでも「俺にわかるように説明しろ」「訳の分からない数字を並べて煙に巻こうとしている」といったようなはじめから理解を放棄したようなTweetを書く人が、かなりいるんですよね。これ、若い人ばかりではないと思うし、ネットだけでもないんでないかな。


結果どうなるかというと、「御用学者リスト」みたいなものが出てきて、Twitterでまともな見解を書いておられる先生がたまでリスト入りするはめになる。物理学クラスタの先生がたは「御用学者リスト」を鼻で笑っておられたけど、過去のネットにおける○○運動の経験から言わせてもらうと、ああいうものは真剣に問題視したほうがよろしいと思いますよ。ええ。


言っちゃなんですけど、物理学者の解説より「御用学者リスト」を信用するアホは五万といて、しかもネットではそっちのほうが多数派を形成しかねないんです。仮に多数派を形成しないとしても、かなり面倒な存在になってしまう。


ああいう人たちをバカにするのは簡単だけど、でも、そんなもんですよ。知らない・分からないんだから。バカにしたところで仕方がない。「高校レベル」を知らないのが世間では当たり前なんで、それを当たり前に求めるほうが間違っているんです。


この断絶を改めて目の当たりにしてあんぐりするしかなかったんですが、そこで一体、ニセ科学を馬鹿にし続けることに何の意味があったのか、科学への信頼と理解をより高める努力をもっとするべきだったんじゃないですかと。「ニセ科学批判」みたいな安易な道じゃなくて、教育レベルでもっと当たり前の、普通のことを充実させるよう努力するべきだったのではないんですか。


ホメオパシー批判を借用すると、ホメオパシーを信じるなんて地球が平らだと信じるようなもんで「まとも」じゃないといってバカにする。同様に、ごく微量のプルトニウムも恐ろしいと言ってる人たちのこともバカにされるべきだし、そうすればよいじゃありませんか。でも、明らかにそういう問題ではないでしょう?


僕が感じたのは「だから言ってるじゃないか。ニセ科学批判の人たちは今まで何をしてきたつもりなんだよ」という呆れだったというのが、正直なところでありました。