ネット○○派 part151 東京の青少年条例のおさらい

ひょっとして、本当に規制対象となるものが知られてないんじゃないの???編集者とか評論家とか作家とか肩書きがある人たち、本当に条文を読んだの???ちょっとおさらいしましょうよ。

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まず、改正案第七条第一項第二号をみましょう。問題になっている部分です。

二 漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く。)で、刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為又は婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為を、不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を妨げ、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの

対象となるものは


1 刑罰法規に触れる性交若しくは性交類似行為

2 婚姻を禁止されている近親者間における性交若しくは性交類似行為


を「不当に賛美し又は誇張するように、描写し又は表現する」ことによって云々。。。というものです。


具体的には、未成年との淫行・強姦・近親間の性行為を描き、かつかなりドギツイ描写が連続してるエロに限定されると見るべきです。このあたりは、今までの運用からも伺い知れるところであって、現状の条例でも行為を描写するだけでは対象にならず、体液を描きこむなどまでやらないと、第八条の不健全図書にも指定されない。つまり、東京都の運用は意外に自制的。
http://d.hatena.ne.jp/jura03/20100327/p2
追記
対象が曖昧だということですが、現行の第一号と比べるとかなり明確に限定されているのが分かると思います。繰り返すと、そういう曖昧な条文で46年も運用されてきたのに、さらに明確限定的な条文が付け加わったからとて騒ぎ立てること自体が、そもそもおかしいのです。
http://d.hatena.ne.jp/jura03/20101213/p3


それでも文句を言う人にはあたしゃ言いたい。刑法第175条を見よ。わいせつ物頒布等に関する条文だが古い法律だから、「わいせつな文書、図画その他の物」としか書かれてないのにちゃんと運用されている。


「対象が曖昧」「対象が拡大される恐れ」と言いふらす人たちは、まずこういう現実についてどう考えるか一言言ってから、反対してもらいたいもんだ。
追記終り)

ちなみに、某まとめサイトで、ストーリーが問題になるとか、過去を扱ったもので登場人物に現代の条例に従わせなきゃならないのかとか書いてありますが、全部間違いです。問題になるのはストーリーではありません。また過激な性描写が連続するそれ目的のエロが対象なので、現代も過去もありません。当たり前でしょう。


・・・というと、「そんなマンガ、どれほどあるの?」とおっしゃる方が結構います。つまりそういうことなんで、対象となるものは非常に限定されていると見るべきです。あたしゃそういうマンガを読む趣味がないので具体的にどれとは言えないが、影響を受けるマンガはかなり少なかろうというのは想像できますわ。


それに、そういうマンガを成人向けとして売れということに、一般的にどれほど抵抗があるかというと、ほとんどないでしょうね。これまた当たり前。

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現行条例では個別指定でした。改正後もこれは変わらないようです。包括指定にならないのですね。
都議会 青少年健全育成条例改正案についての答弁 - YouTube


どうなるかというと、第7条のほうは「当該図書類又は映画等を青少年に販売し、頒布し、若しくは貸し付け、又は観覧させないように努めなければならない」という自主的な努力を促す規定。つまりは成人コーナーの棚に置けということ。また第八条の規定に含まれるものが「表示図書」として自主規制団体が成人向けという表示をして成人コーナーに置かれると。


自主規制から漏れて、一般扱いされた場合、不健全図書に指定される場合があります。その場合、強制的に成人向け扱いされることになります。
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/08_jyourei/08_aramasi.pdf


つまり、具体的な規制は「成人向けの本は成人コーナーの棚に置いてください。青少年に売らないでください」ということにすぎません。表現が規制されるわけではありません。


ただここで、ただの販売規制ではない、実質発禁だといわれるゆえんの一つに、帯紙措置があります。帯紙措置とは自主規制の一つで、雑誌類で「不健全」指定を規定回数受けた場合、「18歳未満に販売できない」という「帯紙」がつけられ、それがないものは取次で扱われない、というものです。


ただし、この結果、売上が極端に減って休刊に追い込まれることが通例になってしまっているそうなので、実質的な「発禁」だといわれるのです。。。でも良く考えたら、雑誌なんだから「休刊」しても別のかたちにしたら続きそうなもんだけどね。
帯紙措置


単行本の場合、現在ではネットで普通に買えるので、不健全図書指定が実質的「発禁」処分だということは、ありません。
不健全指定図書の買い方 - Log of ROYGB


つまり、表現規制だの対象が曖昧だのいうのは全部デマで、政治運動を煽るための道具にしか過ぎず、「表現の自由」なんぞという法律用語も都合よく使われていただけです。


石原さんや猪瀬さんのホラや、推進団体の過激な意見などなど、ネタになりそうな餌はたくさんあるけれど、現実に出てきたものがこの程度のものでしかないのだから、実に全くもってお疲れさんとしかいいようがない。

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さて、「東京都青少年健全育成審議会」が問題の本が不健全かどうかを第八条に基づいて決めることになります。審議会のメンバーは、「業界に関係を有する者 三人以内 青少年の保護者 三人以内  学識経験を有する者 八人以内 関係行政機関の職員 三人以内 東京都の職員 三人以内」。都知事によって任命されます。
東京都青少年の健全な育成に関する条例


現実には、担当の人たちがコンビニ・書店に入って問題になりそうな本を購入し、そのなかからさらにいずれかを選び出して、審議会にかけるという運びです。


議事録を読むとほとんど「指定やむなし」「指定で結構です」で通ってしまいますが、議論になることもあります。全部議事録として公開されているので、興味のある人は読めばよろしいです。


また、審議会にかける前に、出版社などに事前に調査しています。当然「指定反対」の声が多くなる傾向。それもきちんと審議会で報告されています。
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_kenzensin.html

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Twitterを見てると、つい最近はじめて条文を見て意見を変えた人とかもいて、本当に、呆れた。編集者やマンガ作家など、その筋のプロたちもちゃんと理解せずに煽り、煽られてるのが現実。反対派でそもそもちゃんと条例を読んだ人、ほんっとうに少ない。


そこで改めて整理してみた次第。反対派の人たちは、まとめサイトWikiなんぞあてにしなさんな。