優先順位問題の弱点ぶり

もうあんまり書くことない。ただ、優先順位問題はやっぱり触れておかなきゃならんか。


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菊池先生のコメントを読んでると面白くて、たとえば、

「偉そうなことを言うな」と言いたくなるのはわかるけど、「言わないよりは、言ったほうがましなんじゃないの」という程度の返事しかできません。
kikulog

これはよく分かりますよね。そうそうって。こういう穏健さが好ましかったんだよなあ。これが変質したのは菊池先生のせいだけじゃないと思うけど。それはともかく、その直前はこう。

「ネットで言っててもだめ」は正論なのだけど、「だからネットに書いてないで、自分で行動しろ」と言い出すと、その言葉は自分に跳ね返って、「そんな批判を書く暇があったら、行動で示せ」となるわけですよね。それは不毛なんです。

これは、んーー???と首をひねらざるをえない。理屈がねじれている。「その言葉は自分に跳ね返る」って「自分」が同じニセ科学批判やってんならたしかにそうだけど、そうじゃないですよね。前提が違うんだから「跳ね返」っていくわけがない。ま、こういうことがあって、文体が素直だからってハイハイ言ってると見逃す。


優先順位問題ってのは微妙な問題ですな、こりゃ。優先順位問題というのは、AよりBのほうが大事なんだからそれをやれと言われた時の返答の問題で、何を扱うかの優先順位は個人個人違うし、リソースが限られているので何でもかんでもできません、ニセ科学はすべて重要な問題ですと。菊池先生の立ち位置からすると、右からも左からもつっつかれかねないから、それを柳に風とかわすにはこれしかない。うまい。


でも、はっきり言ってこれは答えになってない。「水伝」で手がいっぱいということだけど、実際はいろんなエントリで他のネタが取り上げてるわけで、選定基準がある。「なんであれを言わない!」という人間には、その基準を答えるのが普通だ。たとえば「過度に政治に巻き込まれたくありません」とか。それでいいじゃないか、、、と思うけど、911陰謀論を取り上げたのは平和運動やってる人たちがそういう言説を支持するのは困るからだよねと、ま、逃げ切れない。


この調子だから、優先順位問題として語られているものには目くらまし機能がたっぷりで、あまり素直に受け取れない。逃げたつもりかもしれんが、意図は丸分かりだから頭隠して尻隠さずになっている。


ちなみに、911陰謀論を信用したらしいK9MPってなんだと思ったらこんなのだった。で、「緊急のよびかけ」ってのがまたおもしろくて、

 この数年、この国をただならぬ暗雲が包んでいます。
 日本社会の基盤であり、国民と政府の規範である憲法が、いま風前の灯火です。(略)
 言語に絶する破壊。混乱と無秩序、飢餓と絶望の淵から再起するため、日本国民は過去の過ちを反省し、崩れぬ平和を渇望して、現在の日本国憲法を確定。不動の「決意」を世界に宣言したのでした。
 「現代の地球上で、もっとも先進的な憲法だ」と、世界に認められ、羨ましがられてもいます。

「世界から羨ましがられている」という根拠を出せって話なんだが、これでニセ科学批判をするなよと。ってか、今のニセ科学批判の心理ってこれとおんなじ。


NATROMさんは911陰謀論の関連エントリで「9条堅持の立場を貶めるネガティブキャンペーンと考えるのが自然です。『平和運動や護憲はうさんくさい』と思わせたい勢力による陰謀に違いありません」だって。まあ、そりゃこういう人が煽ってりゃネット右翼化しますわ。ニセ科学批判とこういう人たちとの親和性ってだからこういうことって、いや、サヨクだけじゃないですよ。いつも引き合いに出すけど天羽先生がいる。つまり、こういう脅迫観念で動く心理としては右も左も同じだ、過激な人たちは。


それはともかく、本当に判断に困るのは、一体どこからどこまで意図的にニセ科学批判を政治的に利用しているのか、これが分らない。最初から最後までならひどすぎ。そう思いたくないけど。ただ、過激派と穏健派との関係はどうなってんのかな、とか言い出すとブログの範疇をこえるのでもうやめやめ。


とにかく、今のニセ科学批判は複雑な事情を抱えていて、ますます価値中立的なものではないように思えてきますわね。一筋縄ではいかない。


ま、そういうこと。表面上は普通に自然科学の話だけど、内実はややこしすぎ。素人は、こんなものに乗っちゃいかんなあ。あぶないあぶない。