ネット○○派 part352

ニセ科学批判はよく、白黒二つに分ける単純な二分法は取らない、グレーゾーンはあるという。まあ、それはそれで分からんこともない。


ただ、久しぶりに社会学玄論を見たら、次の部分は面白かった。
科学哲学者・戸田山和久の科学観の矛盾 : 社会学玄論

科学のアイデンティティをどこに求めるかで、科学とニセ科学の区別基準が変わってくるわけであるが、知識獲得手続を対象として境界線を引くことで、明確な二分法的基準を確立することができる可能性がある。例えば、科学界で公認された方法で(観測・実験している/観測・実験していない)という二分法には、グレーゾーンは存在しないのでないとかと思われる。科学界で公認されていない観測・実験方法で得られた知識を科学的知識と豪語すると、はっきりとニセ科学となる。
 二分法的思考は重要なのである。

まあ、それでもグレーゾーンみたいなものはあるのかもしれないし、そこら辺は自然科学が専門の人たちは肌に感じるところもあるんだと思う。


ただ、つねづね、ニセ科学批判は何を基準にあるものをニセ科学と判定しているのか、何をもって「真っ黒」と言ってるか全く不明だと僕は主張してるわけだけれど、そのなかで、ホメオパシーと漢方・鍼の扱いの差についてのダブルスタンダードをしつこく書いています。


で、これについてたぶん一番単純な答えは、「漢方・鍼はニセ科学ではないのでニセ科学批判の対象にならない」だと思う。一番単純だし、明確。というのも、漢方・鍼は科学であることを別に詐称もしてないし、それっぽい手続きを経てるわけでもないし、漢方なんかはたしかに研究がされているけれども、それでも「こんなに論文がある」と常に言いだすホメオパシーとは違う。


もう根本的に漢方・鍼とホメオパシーは違うから、それを同列に並べて論じるのは無理だ、と反論するのは可能です。

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ところが、菊池先生はどういう立場をとったかというと、これだからね。
ネット○○派 part41 理解不能Ⅱ 菊池先生の失言 - 今日の雑談

じゃあ逆に、なんて言うんですかね、まあある程度エビデンスがあるものとしてはたとえば漢方とかありますよね。それからまあ鍼とか、ちょっとさっき名前が挙がった「代替医療のトリック」のなかで言うと、ま、痛みにはちょっと効果があるんじゃないか位のことを言われてますけど、あれはたぶんでも日本では長く使われてるから、もっと調べてみる価値はきっとありますよね。

TBSラジオで言っちゃった。


これ、本当は「私は専門外のことなのでよく分かりません」とか「物理学者としてはなんとも」というのが本筋のはずで、なんの根拠があってこんなこと言ったのかと。


本来ならば、漢方・鍼とホメオパシーはそもそも土俵が違うという言い方もできるのに、自分たちで同じ土俵に乗せてしまった。


しかも、これも以前書いたけれども、鍼にいたっては「懐疑論者の事典」でも取り上げられたネタであって、ホメオパシーと同じくプラセボだということに、一応なってる。
「懐疑論者の事典」も鍼をメッタ切リ - 今日の雑談


ニセ科学批判が漢方や鍼を是認し得る根拠ってどこにもないはずで、確認がとれた漢方薬みたいなのを除いてはせいぜい判断保留とか「分かりません」というのが精一杯のはずだと思う。

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じゃ、ニセ科学批判があるものをニセ科学だという判断基準て何?「真っ黒」って何?という最初の疑問に戻るわけで、ようするに科学哲学だ科学論だ科学の手続き論だとは全く別個の要素を持ってこないとこういうダブルスタンダードは成立しえないでしょう?と。


だから、「真っ黒」というのは差別だ詐欺だ人が死ぬといった類の「世間の道徳」に反するものとか、そういうものを想定する以外ないじゃありませんか、ということになっちゃう。で、それは科学の話ではすでにないんだけど、そこで科学の話と道徳の話とごっちゃにして絶対に負けない理屈を作ったつもりになってますよね、と言うことになるのはもう何度も書いた。


あとは付けたしで、「真っ黒」だけ批判するんだといって「単純な二分法」を回避したつもりになってるあたりがおかしいということも前々から書いている。「真っ黒」を想定してその範囲にあるものをひたすら叩く、その危険性を煽るんだったらやっぱり白黒、単純な二分法をやってるようにしか見えないんで、本当に回避できているのかどうか、甚だ疑問。恐らく回避できてない。


回避できてないから、ホメオパシー叩きでホメオパシーだけが異常に目の敵にされるし、簡単に正義の立場につきたがるネット民たちのおもちゃにされやすいんだと思う。