ono hiroshi@hiroshimilano
イタリアは政府がリアルタイムで緊急招集され緊急法案を即時実施して封じ込め対策に必死です。結果がどうであれやれることは全てやっている最中。なぜなら感染症蔓延を防ぐには封じ込めしか手がないから。韓国もこれを必死にやっている。何の手も打ってないバカが人のことを悪く言う最悪の愚行。

こういう論調は非常に誤解を生む。

 

そもそも日本の検査対象も拡張しているわけで(相変わらず検査対象が狭いのはアメリカじゃないか、批判するならそっちをやってほしい)、そこの認識がおかしいんだが、私が言いたいのはそこではなくて、なんでイタリア政府が必死になっているかの点について。

 

これは理由がいろいろあると思う。

 

一つは、今イタリアは非常なパニック状態になっている。そこで相当厳格にやらないと暴徒が出てくるからで、そういう危険は実際あり、薬局にマスクを盗む強盗が出ている。治安が非常に安定している日本ととても比較にならない。

 

公共施設が真っ先閉鎖されたが「パニック対策だ」と指摘するイタリア人が普通にいる。

 

学校の先生で、生徒たちにはペストの流行の背景にある集団ヒステリーを教えるんだが、今の様子じゃ中世以下じゃないか、みたいなことを書いている人もいる。

 

つまり、分かる人にはよく分かっているのだ。

 

もう一つ、より大きい理由は現在の政治情勢、これを抜きにしては理解が不可能だ。

 

第二次コンテ内閣の政権基盤が非常に脆弱で、つい最近も民主党から出た元首相のレンツィが暴れまわって、いよいよ政権が倒れるかという騒ぎの真っ最中だ。

 

そこで、いささかでも隙を見せると何を言われるか知れたものではない、実際「コロナ無策」批判はあるわけで、そういう背景が分からないとこういう強硬策をとる理由が理解できない。

 

もちろん、同じ陸続きの他の欧州諸国からの批判ということも意識しているだろうが、隣国オーストリアはさすがによく分かっていて、電車は止めても飛行機やトラックは今のところ止まっていないのではないか(な?)。つまり、感染症対策として恰好だけつけている形になっていて、いわゆる「封じ込め」に意味がない、国境封鎖しても仕方がないことは理解されているのだと思う。

 

イタリア国内でも、一般的には学者たちが「封じ込め」には意味があるとして、隔離や検疫を続けているといずれ「消える」という論調もあるようだが、んなわけないだろう。

 

この点、日本の医者や学者たちの方がはるかに誠実で、「封じ込め策」はあくまでも時間稼ぎにすぎないこと、いずれ全員がこのウィルスに感染するであろうことなどなど、多数の感染者の観察に基づいた、現実に沿った話が出てくるようになってきた。

 

ちなみに、日本の医者や研究者が言っていることを、ネットでそのままイタリア語で話してみたが、私がどういう人間かリアルで知っている人たちはまだしも、ほとんど受け入れられなかった。

 

イタリアはまだパニックが始まったばかりなので、まだ現実を受け入れるところまで行ってない。日本でも全然ダメなんだから、そりゃそうだろう。

 

何度でも書きたいが、1月下旬から世界が動き出して、それでどうにかなると思っているほうがおかしい。

 

イタリアでの流行地域の近くに私の友人が住んでいる。私に言ってきたことが、

 

「今になって、イタリアだけじゃなくて、ヨーロッパ中にウィルスがいるということがよく分かった、イタリアは検査しているから感染者が確認されているだけで、他国は何もないふりをしているだけだ」

 

と。「それをあたしゃ前から言ってるの、やっとわかった?」と言ってやったら、よう分かった、と。

 

そういう現実的な認識を、イタリア人が広く共有するにはまだ時間がかかりそうだが、我々はもういい加減、現実を素直に認めるべきだろう。それが、お医者さんたちの負担を減らす、唯一の道だ。

 

(追記)

韓国やイタリアの対策と同列に、中国の対策を並べる議論をみた。

 

特に中国在住の医師等がその有効性を主張している。

 

専門家の見識は尊重したいと思っているが、そもそもとして、WHOは表向きの議論とは反対に、実は中国が事態をコントロールしていないことが分かって暗くなった、という11日から行われた専門家会合での話を私は聞いている。

 

かつ常識的に考えて、今は良いかもしれないが、いずれ人の流れが元に戻ると、当然ウィルスの流れも元に戻るわけで、要するに今までの努力がすべて水の泡となって消えるのではないだろうか。私にはそう思われて仕方がない。むろん、感染拡散を抑制する一定の効果はあったんでしょうが。

 

みな、対策を打てばどうにかなると思いたいのはよく分かるが、少なくともこのウィルスについては医者も専門家も完全な封じ込めが可能だとは考えてなさそうである。