法の下の平等」というのは、どこの国でも実態は怪しいものなのかもしれないが、しかし何回でも確認しておく必要はあるのだろうと、このところつくづく思っている。

 

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私の身の回りを見回して、引きこもりの人や、精神疾患を患っている人などはそう珍しくない。中には刃物を振り回して家族に危害を加えたという話も聞く。

 

このような場合、家族以外の人間に危害を加えてはいけないからと言って、家族の中だけで「処理」すること、つまりその人を殺害することが是認されるとは私は考えられない。

 

もちろん、家族だけがつらい問題を抱えることは到底不可能だ。だから、あらゆるところに助けを求めるべきであり、それをしないことのほうが大いに問題だ。

 

もちろん、これはつまり社会としていかにこのような問題と向き合うかということで、「行政や警察に頼ろうとしても、まともに対処してくれない、あてにできない」という現実はあるのだろうが、これはこれで考えないといけないには違いない。

 

しかししばしば起こるのは、行政や警察に頼ることそれ自体を否定してしまい、せいぜい親族知人の範囲内で何とか対処しようと頑張ってしまうパターンで、これは良くない。無理なものは無理であって、頼られる側も困ってしまう。

 

つまりは、社会としてどう向き合うか、一段ともっと考えようという話になるべきであって、「他人に迷惑をかけないように家族内で処理した親はよくやった」「サムライだ」などというのは、全く理解に窮する。

 

むしろ、そんな家族では、親子関係はそもそも成立できようはずもなく、一刻も早く家族関係を断ち切る勇気が必要だ。

 

家族とはいえ、個々の人間はそれぞれ全く別であって、誰かの所有物として自由に処分できるというようなものではないし、そういうことがあってはならない。

 

家族だからという美名の下で、いかなる人権侵害が行われて、黙認されてしまっているか。

 

一生施設にいるほうが、親に殺されるよりははるかにましだろう。

 

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現在話題になっている話で私が気になっているのは、「引きこもりの息子のせいで、娘の縁談がどれも破談になってその娘は自殺した」という話だ。これだけ聞くと、なんとかわいそうな、ということになる。

 

しかし、この話は本当なのだろうか。社会的地位のある父親の娘なら、立派な嫁ぎ先もあったのだろうが、何もそのようなところに嫁がねばならないものではない。引きこもりで暴れる息子のせいで結婚できなくなったという話をその娘が信じていたとしたら、そちらの方がよほど問題だろう。根拠のない事を信じ込まされていただけなのだから。

 

そういう話にならず、娘が自殺した原因も、父親が処分した息子のせいだという話になってしまうのは、どう考えても解せない。

 

「死人に口なし」とはこのことだろうと思うが、そうはっきり誰も言わないのだろうか。

 

40歳を超しているとはいえ、殺された人が大層気の毒に思われてならない。言いたいことがいろいろあったろうに。