「東京はどないなっとりまんねん」:「中央」は橋下=維新のシンパばっかりやったんやろ要するに

2009年の記事でも引いた、音楽学の白石知雄先生のブログを久しぶりに見たら、大阪の住民投票の感想に違和感を感じなかったので、ここに紹介する。

「嫌な選挙」 - 仕事の日記

大阪の住民の皆さんの投票の開票速報番組が、どーしてNHKやフジテレビの東京キー局から放送されるのか。純然たる大阪の出来事なのに、キャスターが大阪入りすることすらなく番組を作るってどういうこっちゃ。

この点、むしろ橋下の扇動家としての能力の高さを認めるべきなんでしょうが。

「背後の匕首」論 - 仕事の日記

くすぶり続けるであろう可哀想なナルシストたちへのケアを含めて、これからが難儀だね。

(「橋下は文化の破壊者ではない、どの団体もつぶれていないじゃないか」と言っている者がいるようだが、数十年存続してきたような音楽団体は、いつの世でもそう簡単にはつぶれないものです。

そもそも、「文化」は目立つから狙われただけだし、彼が発したメッセージは「大阪の帝王となった俺に跪け」であり、それはいわば、格好のイジメの標的になってとばっちり、みたいな話に過ぎない。兆候的な威張り方ではあっても、文化が彼の本命のターゲットだったことは一度もない。便乗して騒いだアホはおったけどね。

そんなこととは関係なく日常は続くのです。)

「大阪の帝王となった俺に跪け」をメディアは大いに助けたし、それは東京のメディアや人間どもも同じだった。

東京のある政治学者は、以前「維新を批判しても相手の手に乗るだけだから無駄」「中央政界への影響は限定的だし」といったことを tweet してて、その見識にほとほとあきれ果てたわけだけれども、現実には住民投票後の記者会見などを聞いていると、憲法改正問題などで中央政界への影響はやはり少なからずあったようであることは、記者たちの質問の仕方から察せられた。

じゃ、なぜ「維新を批判するな」と言ってみたり、「またバカサヨが維新批判を(藁」という話になってしまうのか。

本当は、橋下=維新を支持してたからでしょ。橋下の慰安婦問題の扱いで、大っぴらに支持することはできなくなったというだけで(堂々と手のひら返しされているのをみて、どれだけ呆れたことか!)。

市民・国民・ネット民 - 仕事の日記

日本の「中央」にいる人たちの報道は、「大阪在住の日本国民」が右派(国家主義改革派)と左派(福祉国家維持派)に分かれて争った、という構図だと思う。

そして左派が土壇場で踏ん張ったことは、右派がヘゲモニーを握る「中央政局」の今後を占う試金石になるであろう、云々と解説される。

まずこの構図が全部間違い、ウソだった。

でもねえ、橋下くんが仕掛けたのは、「大阪市民である前に日本国民である前向きなグローバル人間」と、「日本国民である前に大阪市民である後ろ向きなローカル人間」の二択、という構図だと思うんですよ。

都市生活者が市民と国民の二重のアイデンティティをもつのは、ごく当たり前のことなのに、敢えて分けろ、どちらか一方を選べと迫ったわけで、そこが陰惨だったわけです。

で、「中央」の人たちは、「日本国民である前に大阪市民」みたいな心性をあざ笑って一切無視するわけですね。

そこが、「中央の人たちは実はみんな橋下シンパなんじゃないか」という不信を生んでいるんだと思う。

もっとも、レトリックとしては「大阪人の気質が」「大阪人らしさが」云々といった話をよく見た。そういう言い方をすれば、大阪人の琴線に触れるとでも思われていたのではないか。

実際には、橋下=維新は中身がない、実質がないので、イメージだけで煽ろうとしても煽り切れないものがあった。だからコケた。

中央の人たちは、そんなことも分からない。「実はみんな橋下シンパなんじゃないか」という不信は、昨日も書いたように、Twitter の反応を見聞するとかなり正当だった。

ただし、住民投票後に行われた、自民党の谷垣幹事長の記者会見や石破大臣のブログなどを読むと、橋下=維新の「都構想」を全く支持しない、谷垣幹事長に至っては橋下=維新を露骨に嫌悪しているらしい様子がうかがえたのは非常な救いだった。右派の内部でも、ようはそういう認識の人たちはいたわけですね。

しかもややこしいことに、今のニッポンには、「国民である前にネット民」であるようなスーパーグローバルな思想地図を思い描く人たちがおる(笑)。

そして彼らは、「市民」より「国民」のほうがスーパーグローバルに近いってことで、都構想支持を表明したりするわけだ。

民間人が商売としてゆうてるだけなんで勝手にしたらええけど(笑)。

東京はどないなっとりまんねん、ってことだよね。

ところが、東京は「中央」だと思ってふんぞり返ってるから、「どないなっとりまんねん」とは本人たちはとても自覚してないわけですよ。

もう本当にどうしようもない。