扇動のための不当表示としての「リフレ派」 part134

9月半ばに消費税に関する一連の記事が出てきて「飛ばし」批判が沸き起こった時に、真っ先に思い出したのは、ユーロ危機真っ盛り、ギリシアがユーロから離脱するかもしれないという時に出された、ドイツの週刊誌 Der Spiegel のある記事です。たしかその記事は、仮にギリシアがユーロから離脱する場合、どういう悪影響があるか、ドイツの財務省による試算を紹介したものだったと記憶しています。


当時のドイツの世論は、ギリシアに対して極めて厳しいものでした。そこで、何の根拠もありませんがこういう想像(妄想)は可能です。


「ドイツの財務省は、ギリシアのユーロ離脱に関する試算を意図的にリークし、Der Spiegel を読むようなレベルの読者に、ギリシアがユーロから離脱するという選択肢は絶対にありえない、と訴えようとした」


こういう想像に基づいて、「ドイツのジャーナリストと財務省は癒着している」という批判をやるとしましょうか。たぶん、この想像はそんなに間違ってないだろうとも思うし。


でも問題は、この想像(妄想)には何の根拠もないということです。


したがって、個人的な考えとして、ま、たぶんそういうことだろうな(ニヤニヤ)、と言っている分には全く問題ないだろうと思いますが、「これは大手誌と官僚の癒着だー」「情報操作だー」と批判するのはやりすぎだし、批判したとて意味がない。そういうことを前提にして記事を読んで解釈しておいたらそれで十分、ということにしかならない。


・・・もっとも、ギリシアをユーロから追い出せと思ってる人とか、Bild あたりの大衆紙の扇動に乗っかってるような人が「Der Spiegel と財務省は癒着している!」云々と批判しだすとか、それならまだ分かりますよ。


でも、ああなるほど、こういうリーク(たぶん)にそういう類の批判をしちゃう程度に煽られてるんだなぁと、その人のバイアスが浮き出てしまいますよね。

・・・

消費税に関する記事も全く同様で、リークだー、飛ばしだー、リークの意図はー、と言って批判するわけですが、そもそも論として「飛ばし」「情報操作」さらにその「意図」について、確たる根拠を私たちには持ちようがないので、想像(妄想)するしかないわけです。


もちろん、たぶんこういうことだろうな、と個人の想像の範囲内でニヤついておく分には全く問題がないと思いますよ。


でも、確たる根拠がない、個人の想像でしかないことに基づいて、大っぴらに批判しちゃうには、「個人の想像」にすぎないものをほぼ確定的な前提として扱わないと批判できないわけで。


個人的には、せいぜいのところ「観測気球」「地ならし」以上の意図はないだろうと思っています。特に東京オリンピックの開催が確定してから、消費税をあげない理由を挙げるほうが難しくなってしまって、安倍さんが消費税を上げない決断をする可能性は相当程度なくなっていたわけで、「大手紙と政官の癒着」による「情報操作」「飛ばし」記事を通じて安倍さんを消費税増税にむけて決断させる流れを無理やり作るとか、そこまでやる必要性があったのかどうかよく分からない。


そうなると、ま、せいぜい「観測気球」以上のものはなく、政治記者さんたちが先走ってネタに食いついたんだろうな、ってなところで終わる。飛ばしだの情報操作だの「異常だ」といちいちあげつらって批判する理由が見当たらない。


むしろ、この程度の話をいちいち問題視する人たちのほうがはるかに「異常」であるようにしか見えないわけで、ま、Bild レベルの扇動を真に受けるドイツ人と同じように、リフレ派の人たちがいかに陰謀論にのせられちゃっているかを示している、と言いたくもなるわけです。