黙っていられないこと part28

復興予算の「流用」の件で、去年なんと言ってたか、たいていの人が忘れてるらしい。すぐ予算策定してドンと投入しろ、みたいなことがおおよそ言われていた、ように思う。。。違ったっけ。


と思って自民党のサイトを検索したらすぐ引っかかったのがこれです。
東日本大震災|第二次補正予算と自民党案の比較 | コラム | 自民党の活動 | 自由民主党


昨年7月段階で単純に23年度の2次補正予算案と自民党案との比較をしたものですけれども、自民党は政府案の2兆円では足りないといっていたわけです。これは2次補正だけの話とは言え、「スピード感がない」とか言われたらまあそうでしょう。


ところで自民党案のざっくりとした内訳をみると「災害に強い国づくり」で3兆円、「我が国産業の基盤強化」で1.1兆円、「その他」で2.5兆円(政府案は0.8兆円、他の2項目は0円)が上げられています。


同時期に書かれたらしい「震災後の経済戦略における特命委員会」中間報告というのがあって、そこにはほぼ同趣旨のことがより細かく書かれています。これで自民党の主張が多少ははっきり分かる。
http://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-060.pdf


たとえば、「2.(3)日本経済全般への視点が欠如」という項には、

 復旧対策の財源確保のため全国の公共事業を一律5%削減するとの政府方針は、震災による景気の落ち込みを一層深刻なものにする。復旧対策のための財源は復興債などで別途確保し、全国レベルの景気対策、防災対策等から必要な公共事業は積極的に推進すべきである。
 我々は「日本経済全体の回復こそ、被災地の早期の復興につながる」との考えの下、日本全体が受けている震災の影響を最小限にくい止めるための政策を着実に実行すべきであると考える。

とあります。。。最初から「流用」する気満々、というか非常にもっともなご意見です。


さらに「3」では使途について大まかな額をだしています。「災害に強い国土づくり」「我が国産業の基盤強化」「その他」も出ています。細かいことは見てください。


あと、話は変わりますが、財源として国家公務員の人件費削減について政府方針ではなく、民主党衆議院マニフェストの通り国家公務員の人件費2割カットをやれと言っています。。。さらっとひどいこと言ってたんだなあ(ボソッ)


ま、ともかく、自民党も去年はこう言っていたわけで、、、


で、上記の自民党案の3項目計6.6兆円について、さすがに全部被災地と無関係というわけではないでしょうが、関係が薄そうなものが多く含まれることになったであろうことは容易に想像が出来ます。そりゃあ、こういう予算がつけば、あらゆる方面からいかなる理屈をつけても名目を作って予算を取ろうとするでしょう。


結果はきっと同じことになってたんじゃないんですか、これ。それに、実際の予算に自民党の意向はそれなりに反映されてるはずだし。


そしてそれが一概に悪いことかどうかは難しいところで、私は別に問題のあることではないと思う。


というよりも、ちゃんと評価するべきでしょうね。もちろん、批判されるべきところは批判されればいいんだけど(大雑把に言えば、どのツラ下げて自分で賛成した予算の批判が出来るんだと思ったりはする)、全体の方向性としてこれが間違っていたとは全く思わない。


その点で、what_a_dudeさんの、
http://d.hatena.ne.jp/what_a_dude/20121014/p1

私個人としましては、この修正を行った政治家の手腕は評価したいし、東海・東南海・南海地震に備えた防災整備自体は、東日本大震災の事例を活かしながら、可能な限り(200兆円とは申しませんが)やっていくべきだと思っているので、決して批判はいたしませんよ。堂々となんでそういう修正をやろうと思ったのかを出てきてはっきりしゃべるなら私はその人をもっと高く評価したいと思います。

というご意見に全く同感であります。


ただ、これは本人が出てきて話すということにはならないんだ。自分で自分の首を絞められに行くようなものだから。


そこでいつもの話になって、メディアがこれだから、世論がこれだから、ろくな政治ができない、まともな政治家がまともな話をできない。。。絶望するわけですよ。本当はそこできちんと話しないと民主主義って機能しないはずなのにと。


追記
津波被災の記録85 - hahnela03の日記

 復興予算流用批判が、産学官連携というネオリベ・リベサヨ連携の見本のような事業に係る15大学の名前は明らかになっていませんが酷いものですね。この現実がHALTAN、jura03さんたちの批判が的確なものであることの証明になるんでしょうかね。
 「小さな政府」を志向する方達がどれほどどん欲に復興予算を我が物にしたがるために流用批判を利用しているかのほうが問題だと思いますがね。

このあたり、被災地の方々と全く縁遠い人間(誤解を恐れずに言えば)から見るとこうです。


被災地はちょっと脇においておいて、それ以外の地域の世論はごくごく一般的には「財政難の折から行政の無駄遣いは許さない」の類のものです。これは右も左も同じで、強いて言えば「小さい政府」志向だと言っていいし、こういう世論の土壌は震災前から元々ありました。(左派の場合は反権力のポジションを取る結果、こうなってるわけですが)


復興予算の「流用」批判はもろにこの対象です。世間のおおよその反応は「被災地の人たちのためだと思うから増税も許容したのに」「またもや官僚による無駄遣いで本当に必要な人たちの手元にお金が行きとどかないとは何たることだ」と、有体に言えば一頃の生活保護不正受給批判で「本当に必要な人が受け取るならいいがそれ以外はいかん」という議論とよく似ています。


こういう議論がいかに机上の空論で非現実的かとか、それはもうどうでもいい。この議論だけとればごもっともなので、そう言われたら「そうだそうだ」と思う人が結構いる。というより、そういう言説そのものは自明に正しいものであるとされて、あまり懐疑的に疑問を持って見られてないことのほうが一般的なんじゃないかな。ようは自分が何か変なことを言っているとは思ってない。


右サイドからの「小さな政府」志向の論者や、hamachan先生のいう「リべサヨ」の人たちは、こういう世論の空気を煽って自分たちの陣営に引きこんで都合よく利用したいだけ。。。


。。。はっきり言えばあの大地震、あの大津波、あの原発事故さえも「ネタ」として消費しているだけだろうと。「絆」だのなんだのかんだの、大震災直後の日本人みんなの決意はありゃ一体なんだったんだ。


ネットでwhat_a_dudeさんが早い段階から「流用」問題の扱いをすんなり批判しているところを見ても、政治的左右の立場の違いは越えて、当然、分かっている人たちはしかるべきところにいるはずだけれど、メディアも政治家もなにも言えない。世論が怖いので。


かくして、対抗言論はあまり出てこないまま、「流用」批判の声だけで覆われることになる。


そのなかで、見かけ上「小さな政府」志向なことを言って被災地のためと言いながら、本当は自分の利益のために吹いているだけじゃないか、みたいなことも当然あるだろうと思う。商売商売。。。


私は被災地の人たち(官民問わず)が怒るのも当たり前だと思いますよ。


でも、世論一般は怒る対象がそういう構図じゃなくて、「無駄遣い」とか「流用」とかそういうことに怒るんで、もうまるっきり筋が違う。

・・・

あの時みんなどう言ってたか列挙しましょうか。。。と思ったけど止めた。きりがない。どういうことが言われていたか、すぐ思いだせるでしょう。


あれが全部その場の気合いだけ、感情の高まりで言っていただけで、時間の経過とともにきれいさっぱり忘れられ、またもやくだらない党派争いや都合よく綺麗事を語るだけの状態に戻った。ま、震災前の日常だけはちゃっかり戻ってきたわけです。


呆れると言うか、そりゃ普通は怒ると思うんだけれども、全然違うことに怒る人のほうが大多数らしいですね、どうも。

追記2)
もうちょっと書くと、金銭みたいな具体的な利得がある例だと非常に分かりやすいわけです。


他方で、たとえばリフレ派の田中秀臣先生がああいう反応になっているのも、復興予算の「流用」が単に財務省霞が関叩きのネタにぴったりだからというに過ぎず、したがってリフレ派の支持者や田中先生のファンに向けたいわば「芸」だ。自民党の一部やみんなの党などの政治家の人たちの態度だって単に選挙運動の一環にすぎない。そして彼らに限ったものではない。


こういうの全部をひっくるめて、大震災を「ネタ」として消費しているに過ぎないと形容したくもなるわけです。


これは原発問題界隈でもおそらく同じですよね。

追記3)
津波被災の記録85 - hahnela03の日記

 大学研究室の参画という大学側ビジネスの都合のために、学生をボランティアと称して被災地での橋頭堡として利用したわけです。学生側はそういうのも知らないで善意で来ていただいている方もいらっしゃるでしょう。でもこれが現実なんです。
 リベサヨ側のボランティア・NPO橋頭堡確立からネットワーク連携による収奪への道がひらきました。

こういうこととか、それこそHALTANさんが映画界隈の話などでいつもいつもこっぴどく言ってるのと構造が同じでしょう、きっと。学生は善意かもしれないけれど、それを都合よく利用しているに過ぎない。綺麗事ばかり言いながら、そういう悪い大人がたくさんいる。


別に悪い大人でもなんでもいいんだけど、震災直後のみんなの決意はなんだったんだと言いたくなるよね、そりゃ。