ネット○○派 part371 

そもそも、日銀とFRBを比較して、FRBが持ち上げられすぎなんじゃないかというところは非常にありますよ。

・・・

たとえば、 前回書いた伊藤隆敏先生のペーパーなんかでは、
感想 - 今日の雑談
http://www.tito.e.u-tokyo.ac.jp/InflationTargeting_FRB_20120206.pdf#p2

ただし、FRBは、「インフレ目標政策採用」と高らかに宣言はしていない。「インフレ目標政策」と宣言すれば、GDP(雇用)の目標は捨てたのか、と誤解されるおそれがあると判断したためだ。

これは、「インフレ目標政策」と宣言すると、インフレ率だけに注目して、雇用には一切配慮しない、という「原理的インフレ目標政策」と誤解されるおそれがある、と判断したのではないか。とくに、議会の反応には気を遣っている。

いや、まあ、そうなんだと思いますよ。議会とかタカ派、あるいはインフレ心配派の人たちを配慮したというのはあると思う。


しかしですな。なんでリフレ派がこんな斟酌をバーナンキに対してやらなければならないんですか?


つまりインフレターゲッティングを明言できないバーナンキや他の理事連中は腰ぬけなのであって、議会のことなど考慮にいれる必要はない。「世界標準の経済理論」(http://d.hatena.ne.jp/bewaad/20100531/p1)であるインフレターゲッティングが理解できない、上院・下院議員のほうが悪い、さらにいえば正しい政策を理解しない選挙民が悪いのであって、議会の反応にいちいち気を使うバーナンキたちのほうが腑抜けである。


・・・って何で言わないの?


いや、仮にですよ。こういう斟酌をバーナンキにやってやるのであれば、日本銀行に対しても同様に斟酌してやるべきであって、BISビューでブンデスバンクを手本としている日本銀行が、あれこれやってるのは「萌えるっ」という反応が、斟酌の結果の正しい反応でなきゃいかんはずです。


バーナンキにはこんな勝手な斟酌をやって優しい癖に、どのツラ下げて日本銀行には厳しく批判できるのか。私のような素人にもわかりやすく説明してもらいたいよ。

・・・

「デフレ脱却に向けた日本銀行の取り組み」というのが面白いんだけれども。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120217a1.pdf

しかし、わが国では、「インフレ目標」という言葉が、一定の物価上昇率と関係づけて機械的に金融政策を運営することと同義に使われることも未だ多いように思われます。

英国のキング総裁が高インフレを放置していて、庶民にもインフレの実感があるほどなのになにもしないというのが「インフレターゲット」なのかというのは、素人目に考えてこの種の議論はもう意味がなくなってますわな。


ってかですね。バーナンキ本人がインフレターゲットはやってないと明言している傍らで、いやあれはターゲットなんだという経済学界隈の議論の不毛さっていったい何。


しかもですよ、日本銀行は責任を明確にしてないからターゲットでないとかなんとか言いだすんだけれども、他国の中央銀行では考えられない程度に国会に出て、共産党大門実紀史先生からは非常にまっとうな資本主義に関する、それこそ米国の共和党の議員が言いそうな見識からドストレートにつっこまれ、あるいは自由民主党山本幸三議員からはリフレせよとつっつかれ、、、英国の中央銀行総裁が物価がターゲットの外に出ている状況を財務大臣に言いわけしてりゃいいというより、日本銀行の総裁はよほど厳しい環境だと思うんですが、そう考えない人が少なくないらしい。

すなわち、FRBは、政策金利が例外的に低い水準となると見込まれる期間について、経済・物価見通しによって変わりうるという大きな条件をつけたうえで、「少なくとも 2014 年終盤まで」という表現をとっています。これに対して、日本銀行の方法は、緩和政策の出口に関する特定の「時期」ではなく、消費者物価の上昇率という「条件」に結びつける約束です。

だーってさ。したがって、時期が明確でないという批判は無効化されちゃう。


で、面白いのは「インフレーション・ターゲティングとの関係」のところで、

第1に、自らの責務と整合的と考えられる物価上昇率を数値で示すことです。先ほど述べたように、イングランド銀行の「ターゲット」、欧州中央銀行やスイス国民銀行の「定義」、FRBの「ゴール」、日本銀行の「目途」など、言葉は異なりますが、いずれも同様です。

バーナンキはわざわざ、ターゲットとゴールと語り分けたのに、日本銀行総裁はそこをまぜっかえすw。笑うところですよ。

第2のところであげられてる英国の例とかね。

英国のように、金融政策の枠組みをインフレーション・ターゲティングと称している国であっても、実際の運営については、物価目標を短期間で無理に実現するのではなく、経済や金融の安定を図ることを意識して物価目標を中長期的に達成していく、という色彩が強まってきています。

つまりですな。じゃ、「インフレターゲットってなに?」って話ですわな。高インフレでも物価上昇率を下げようとしないんですよw。

第3は飛ばして、最後、

このように、主要中央銀行の間で金融政策運営の枠組みが収斂してきていることを踏まえますと、それぞれがインフレーション・ターゲティングに当たるかどうかという分類学は、本質的な論点ではなくなってきています。実際、FRBが今回採用した「ゴール」についても、バーナンキ議長自身は、インフレーション・ターゲティングではないと言っている一方で、論者によっては、これをインフレーション・ターゲティングと呼んでいます。そのうえで申し述べれば、もし、今回のFRBの金融政策運営の枠組みをインフレーション・ターゲティングと呼ぶのであれば、日本銀行の方法もそれに近いと言えると思います。

この部分の、今日のドラめもんさんのコメントをつけましょうか。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/doramemon1202.html

つーかFRBの枠組み自体が日銀の枠組みをベースにして作られたとしか思えん(政策金利の予想パスとかちょっと斬新というかやり過ぎな追加トッピングもありますけど)ですが、まあそういうことでインフレターゲットと呼びたければどうぞという話ですな。

つまり、これが金融屋さんの実感なんでしょ?


ってことはですよ、日本銀行の「目途」というのは、インフレターゲットと称していいならそう呼んでも構わないわけで、伊藤先生や高橋洋一がやったようにバーナンキの事情を勝手に斟酌してやることが是認されるなら、日本銀行のやってることを「インフレターゲット」と称して別にかまわん、という話じゃないの?


で、そういう斟酌をやらないんだったら、伊藤先生みたいな解釈は読みすぎだ。バーナンキは明確にインフレターゲットを否定しているんだから、そこははっきりさせるべきだし、同時に日本銀行のやってることはインフレ目標でもターゲットでもないので、この講演は無茶苦茶だ、という話にもっていかないと筋がとおらない。

・・・

結論は、この種の議論は不毛ですねということにつきる。


FRBインフレターゲットをやってるのかというと、公式にはやってないですよ。どう読んでもそれはそうだ。


ただ、いろいろ斟酌するとまあね、ということであって、他方で日本銀行のほうはというと「目途」と言って英訳ではGoalなんだから、やりたいことはたいして違いやしないんでしょと。


そこで、わざわざFRBのほうだけ斟酌してやって優しく解釈してやる必然性は、これっぽっちもありゃしません。他方で、日本銀行には不当に厳しく批判してやる必然性も、ありません。


あるいは、FRBインフレ目標を導入したけれども、日本銀行はそうじゃない、みたいな議論も、議論として意味がある議論じゃないんじゃないですか。


そういう話じゃないの?素人目にはそのように見えますよ。


そういう議論に、インテリや知識人が面白がって、善男善女を釣ってるって、なに。単に日本銀行叩きのネタで遊んでるだけじゃないの。
(追記)
himaginaryさんの最新の記事とか実に面白いんだけれども、経済学みたいな学問で「世界標準の経済理論」とか言って素人を脅す論法がいかに経済学の実態からかけ離れてるか、あるいは本来、学者さんが持っているべき謙虚さに欠けているかという点で、リフレ派はチャンチャラおかしい。