ネット○○派 part368 FRBはインフレターゲットをやってないとバーナンキが言っている

いや。。。


面白いなあと思うのはFRBインフレターゲットをやっているとか言ってる人がいるんだけど、FRBインフレターゲットやってないですよ。バーナンキが真っ向否定している。


記者会見の質疑応答の中で言っていて、次の21ページから、Frankfurter Allgemeine Zeitung の記者に答えて、もうはっきりとインフレターゲットはやっていないと言っている。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf


ちょっと引用すると、記者の質問は、

And, the second question is, Comparing what you did today, are you approaching more some kind of inflation targeters like the central bank of Sweden or Norway, or are you approaching more the European Central Bank, for example, which has some kind of inflation goal but is not really an inflation targeter?

つまり、FRBの決定は、スウェーデンノルウェー中央銀行がやっているようなインフレーションターゲットに近いのか、あるいはECBのようなインフレ目標(Goal)の類であってターゲットではないのか、いずれか、と聞いている。それに対してバーナンキは、

Now, are we inflation targeters? If by “inflation targeter” you mean a central bank that
puts top priority on inflation and other goals, like employment, as subsidiary goals, then the
answer is no.

平らに言えば、「インフレターゲット」が、インフレーションを最優先課題にして、雇用などの他の目標が副次的なものにするものを意味するなら、答えはNoだと言っている。

But again, in terms of terminology, I guess I would reject that term for the Federal Reserve
because we are going to be evenhanded in treating the price stability and maximum employment
parts of our mandate on a level footing.

「術語として、Federal Reserve に向けられるインフレターゲットという用語は否定したいと思う、なぜなら物価の安定と最大雇用が我々にとって同様の重みを持つ課題だからだ」と、おおざっぱに言うとそういうことで、ようはFRBの有名な「二つの責務」をこの記者会見ではバーナンキは繰り返し強調していて、だから目標”Goal”ではあってもインフレターゲットでは「ない」と明確に否定している。


どう読んでみたってFRBインフレターゲットやってるつもりがないんですよ、これ。

・・・

つまり、バーナンキの記者会見を読むと、GoalとTargetを明確に分けて語っているんだけれども、このへんが日本語になるといい加減になって、インフレ目標とターゲットがぐちゃぐちゃになっている。しかも単に言葉の遊びにしかなってない部分もあるところに、今度白川さんが「目途」ってな言葉を使いだしたので、言葉の遊び度が増した、という。


ざっと見たところ、金融屋さんたちはこの言葉遊びにやや呆れつつも面白がっていて、つまりさすがによく分かってるように見えるんだけれど、他方で全く理解できてないのがリフレ派の連中。このへんの話をぐちゃぐちゃにして、ひたすら日銀批判のネタにしたのが、高橋洋一
ネット○○派 part365 - 今日の雑談

東大出でプリンストン大学にいたはずの元大蔵官僚のこの人なんかはその典型で、
バーナンキ発言、「物価目標」、銀行の国債暴落シミュレーションーー日銀の情報操作に踊らされ過去の事実までねつ造する「マスコミ報道」を検証する(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
この記事では慎重に「目標」と統一して語っているけれども、
一次資料も読めず、日銀の言いなりになってバーナンキ発言をミスリードする日本のマスコミは、役所に飼い慣らされた「ポチ」(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
その前の記事では、ターゲットも目標もごっちゃにして語っているのがはっきりしている。たぶん、後で気がついたか人に言われたかして、修正したんだと思う。でも、日銀批判だけは続けてる。一次資料も読めないとか言って批判しながら、自分のほうが元をちゃんと読めてない東大出でプリンストン大学にもいたはずの元大蔵官僚をあがめるネット民ってなんなんだ。

で、このおっさんの言うことを真に受ける人が結構いるわけだ。


いや、善男善女の人たちはまだいいですよ。そら、東大出で元大蔵官僚が言ってるんだからそれだけでも信用度が増すから。うっかり信用しても仕方がないところはある。


だけど、普段英語が読めますだ、FT だ The Economist だを読める程度の連中が高橋洋一のただの日銀批判ネタを真に受けてどうすんのと思うわけ。何のために英語がそれだけ読める程度の教育を受けたと思ってんだ。インテリなり知識人なりの責任を感じないのかね、ちょっとは。